若手研究者産学連携
プラットフォーム
このシーズに
問い合わせる
ビジョン
最終用途例
APPLICATION
草や木に含まれるセルロースをメカノケミカル処理で加水分解すると、水に可溶なオリゴ糖を製造できます。このオリゴ糖は、高温高圧水処理により化学製品原料である乳酸やフラン類に変換できることがわかっています。
APPLICATION
バイオリファイナリーの範疇からは外れますが、カニ殻、エビ殻、昆虫に含まれるキチンという物質も、本プロセスで処理できる対象です。このキチンは、医薬品原料に変換できるアセチルグルコサミン等に変換可能です。
APPLICATION
食品廃棄物には、野菜や果物由来の残渣に含まれる食物繊維や、肉や魚に含まれるタンパク質などが含まれています。これらを原料としても、本プロセスで化学製品原料を作れる可能性が示されており、汎用性があります。
強み
例えば、樹木の主成分であるセルロースは化学的に安定な物質であり、これを原料として化学製品をつくるには、環境負荷の大きい硫酸や高価な酵素を用いるのが一般的でした。一方、私たちはセルロースを粘土とともに粉砕し、得られた粉末を高温高圧の水で処理する安価かつ環境負荷の小さい技術を開発しました。
従来のセルロース分解法では、セルロースを水溶液中で硫酸等と反応させ、それにより得られるオリゴ糖を分離回収していましたが、廃液が残ります。その廃棄に伴う費用や環境への影響が問題でした。一方、メカノケミカル処理は溶媒を使わない乾式処理であり、セルロースと粘土の粉を粉砕するだけなので廃液が発生しません。
草木にはセルロースの他にリグニン等の不純物が含まれるので、薬品処理でこの不純物を除去する前処理を行ったうえで、酸処理や触媒反応を行って化学製品原料を製造していました。一方、メカノケミカル処理ではこうした前処理が不要であり、草木をただ粘土と一緒に粉砕し、水で抽出するだけでオリゴ糖を取り出せます。
テクノロジー
粘土はナノシートと呼ばれる平板状のアルミノケイ酸塩が凝集した構造を有しています。私たちは、この粘土にせん断を主体とする粉砕処理を行うと、ナノシートを効率よく剥離でき、化学反応を促進する酸点を表面に露出できることを見出しました。これにより、従来の粉砕法よりも高速で天然多糖類(セルロース、キチン等)の加水分解反応が進み、化学製品原料に変換できるオリゴ糖を製造できることがわかりました。
草木には有用なセルロースの他に不純物であるリグニンが含まれています。メカノケミカル処理では、このセルロースを選択的に加水分解し、水に可溶なオリゴ糖に変換できます。一方、不純物であるリグニンは水に不溶です。そのため、メカノケミカル処理後の粉末を水で抽出すると、オリゴ糖だけを簡単に分離することができます。実際に、シラカバチップに対してメカノケミカル処理を行ったところ、セルロース由来のオリゴ糖を水で選択的に抽出できることを確認しています。
共同研究仮説
私たちはこれまで振動ディスクミルという粉砕機を用いて、グラム単位での試験を行ってきました。当然、実装にはスケールアップが必須であり、それに適した粉砕機の開発もしくは選定と条件出しを行う必要があります。粉砕機器に関して知見があり、装置開発からお付き合いいただける企業様との共同研究を歓迎します。
私たちはこれまで主に試薬の天然多糖類から化学製品原料を製造する検討を行い、その有用性を示してきました。一方、本プロセスの実装には、実際に企業様で発生しているバイオマスや廃棄物で本プロセスの効果を検証する必要があります。これらのアップサイクル技術にご興味のある企業様との共同研究を希望いたします。
研究者
<経歴>
2016.4 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 研究職員
2017.3 北海道大学大学院総合化学院 博士後期課程 修了
2022.4-現在 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 研究主任
2022.9-現在 酪農学園大学 特任講師
<代表論文>
1. T. Mori et al., Chemical Engineering Journal , 501 157530-157530, 2024 DOI: 10.1016/j.cej.2024.157530
2. T. Mori et al., Reaction Chemistry and Engineering, 8, 7, 1553-1558, 2023 DOI: 10.1039/d3re00158j