2024年度公募 seeds-5549 - 【北海道】 粘土とメカノケミカル処理を用いたバイオマス等のアップサイクル技術
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VISIONビジョン

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VISION

ビジョン

バイオマス等から化学製品原料をつくる新しい化学反応プロセスの実装・普及

原油ではなくバイオマス等から化学製品原料をつくるグリーンな化学反応プロセス

私たちの身の回りにあるプラスチックやガソリンなどの化学製品は、石油を原料としたオイルリファイナリーという技術で作られていますが、近年、炭酸ガス排出抑制や資源枯渇といった観点から代替技術の開発が求められています。そのような技術として、樹木の主成分であるセルロースなどの再生可能資源から化学製品をつくるバイオリファイナリーが注目されています。
私たちは、バイオリファイナリーの実装・普及に資する、低環境負荷な化学反応プロセスの開発を行っています。そのひとつとして、メカノケミカル(粉砕)処理と高温高圧水処理を組み合わせることで、セルロースから様々な化学製品原料を製造する技術を開発しました。

USE CASE

最終用途例

タダ同然で手に入るバイオマス等の有機未利用資源から、付加価値の高い化学製品原料をつくることができます

USE CASE 01草や木、紙から化学製品原料をつくる

APPLICATION

APPLICATION

乳酸やフラン類の合成

草や木に含まれるセルロースをメカノケミカル処理で加水分解すると、水に可溶なオリゴ糖を製造できます。このオリゴ糖は、高温高圧水処理により化学製品原料である乳酸やフラン類に変換できることがわかっています。

USE CASE 02カニ殻、エビ殻、昆虫の殻から化学製品原料をつくる

APPLICATION

APPLICATION

カニ殻、エビ殻、昆虫の殻に含まれるキチンの活用

バイオリファイナリーの範疇からは外れますが、カニ殻、エビ殻、昆虫に含まれるキチンという物質も、本プロセスで処理できる対象です。このキチンは、医薬品原料に変換できるアセチルグルコサミン等に変換可能です。

USE CASE 03食品廃棄物から化学製品原料をつくる

APPLICATION

APPLICATION

食品廃棄物に含まれる食物繊維やタンパク質の再利用

食品廃棄物には、野菜や果物由来の残渣に含まれる食物繊維や、肉や魚に含まれるタンパク質などが含まれています。これらを原料としても、本プロセスで化学製品原料を作れる可能性が示されており、汎用性があります。

STRENGTHS

強み

私たちが開発した化学反応プロセスは、安価かつ安全に実施できるので、実装に向けた障壁が低いのが特徴です

STRENGTHS 01

安価・安全

例えば、樹木の主成分であるセルロースは化学的に安定な物質であり、これを原料として化学製品をつくるには、環境負荷の大きい硫酸や高価な酵素を用いるのが一般的でした。一方、私たちはセルロースを粘土とともに粉砕し、得られた粉末を高温高圧の水で処理する安価かつ環境負荷の小さい技術を開発しました。

STRENGTHS 02

溶媒が不要

従来のセルロース分解法では、セルロースを水溶液中で硫酸等と反応させ、それにより得られるオリゴ糖を分離回収していましたが、廃液が残ります。その廃棄に伴う費用や環境への影響が問題でした。一方、メカノケミカル処理は溶媒を使わない乾式処理であり、セルロースと粘土の粉を粉砕するだけなので廃液が発生しません。

STRENGTHS 03

バイオマスからセルロースを分離する工程が不要

草木にはセルロースの他にリグニン等の不純物が含まれるので、薬品処理でこの不純物を除去する前処理を行ったうえで、酸処理や触媒反応を行って化学製品原料を製造していました。一方、メカノケミカル処理ではこうした前処理が不要であり、草木をただ粘土と一緒に粉砕し、水で抽出するだけでオリゴ糖を取り出せます。

TECHNOLOGY

テクノロジー

ありふれた鉱物である粘土を使って、バイオマスから狙った成分を簡単に取り出すことができます

TECHNOLOGY 01

粘土の化学構造に注目した粉砕プロセスの設計

粘土はナノシートと呼ばれる平板状のアルミノケイ酸塩が凝集した構造を有しています。私たちは、この粘土にせん断を主体とする粉砕処理を行うと、ナノシートを効率よく剥離でき、化学反応を促進する酸点を表面に露出できることを見出しました。これにより、従来の粉砕法よりも高速で天然多糖類(セルロース、キチン等)の加水分解反応が進み、化学製品原料に変換できるオリゴ糖を製造できることがわかりました。

TECHNOLOGY 02

草木に含まれるセルロースの反応と分離を同時に実施可能です

草木には有用なセルロースの他に不純物であるリグニンが含まれています。メカノケミカル処理では、このセルロースを選択的に加水分解し、水に可溶なオリゴ糖に変換できます。一方、不純物であるリグニンは水に不溶です。そのため、メカノケミカル処理後の粉末を水で抽出すると、オリゴ糖だけを簡単に分離することができます。実際に、シラカバチップに対してメカノケミカル処理を行ったところ、セルロース由来のオリゴ糖を水で選択的に抽出できることを確認しています。

PRESENTATION

共同研究仮説

本プロセスの実装に向けた共同研究を進めたいと考えています

共同研究仮説01

スケールアップに向けた粉砕プロセスの設計と装置開発

本プロセスに適した粉砕機の開発もしくは選定と条件最適化

私たちはこれまで振動ディスクミルという粉砕機を用いて、グラム単位での試験を行ってきました。当然、実装にはスケールアップが必須であり、それに適した粉砕機の開発もしくは選定と条件出しを行う必要があります。粉砕機器に関して知見があり、装置開発からお付き合いいただける企業様との共同研究を歓迎します。

共同研究仮説02

実バイオマス・廃棄物への適用可能性の検証

実バイオマス・廃棄物からの化学製品原料の製造

私たちはこれまで主に試薬の天然多糖類から化学製品原料を製造する検討を行い、その有用性を示してきました。一方、本プロセスの実装には、実際に企業様で発生しているバイオマスや廃棄物で本プロセスの効果を検証する必要があります。これらのアップサイクル技術にご興味のある企業様との共同研究を希望いたします。

RESEARCHER

研究者

森 武士 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構  研究主任
経歴

<経歴>
2016.4 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 研究職員
2017.3 北海道大学大学院総合化学院 博士後期課程 修了
2022.4-現在 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 研究主任
2022.9-現在 酪農学園大学 特任講師
<代表論文>
1. T. Mori et al., Chemical Engineering Journal , 501 157530-157530, 2024 DOI: 10.1016/j.cej.2024.157530
2. T. Mori et al., Reaction Chemistry and Engineering, 8, 7, 1553-1558, 2023 DOI: 10.1039/d3re00158j

研究者からのメッセージ

この技術をぜひ多くの企業様に使っていただきたいと考えています

社会的な課題となっている温室効果ガスの削減の解決に貢献すべく、本技術の開発に取り組んでおります。一方、本技術には、ゴミをお金になる製品に変えることができる技術である、という側面もあります。ぜひ多くの企業様に使っていただきたいと考えています。上記の「共同研究仮説」の記載に当てはまっていなくても、本技術にご興味をもっていただける企業様・研究者がいらっしゃいましたら、ぜひご意見などを伺いたいです。お気軽にお問合せください。