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安心・安全な社会の実現のため,電気エネルギーの安定的な確保というのは重要です。近年,需要家サイドに設置される太陽光発電や,エネルギー貯蔵能力のあるEVの普及が進み,災害時に広域の電力系統に頼らないエネルギー供給が可能な環境が整ってきました。それら直流のデバイスを従来の機器で使用する,または複数をネットワーク化して利用しやすくするためには,電力を制御する電力変換器(=インバータ)が必要です。しかしこれまでのインバータではすでに従来型電源によって確立した電力系統に連系することしかできませんでした。災害時や移動先のような独立したネットワークにおいてこのようなエネルギーデバイスを利用するためには,自律的に連系ができる「プラグ・アンド・プレイ」が可能な電力ネットワークおよびインバータが必要です。そこで各エネルギーデバイス単位で最も標準的な電力ネットワークの規格ともいえる交流に変換すれば,高度なエンジニアリングを必要とせずに手軽に様々なエネルギーデバイスを利用することが可能になります。このことは,さらなる再生可能エネルギー利用につながるほか,レジリエントなエネルギーインフラの実現を後押しし,現代の社会的な要請に応えることができます。
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ナノカーボン物質は、優れた電気伝導性、導電性、比表面積の大きさ、広い電位窓や汚染耐性など、金属材料を凌駕する電気化学特性を示すことから、次世代導電性材料として注目を集めています。構造柔軟性と伸縮性を併せ持つことから成形自由度も極めて高く、蓄電応用、透明導電膜、バイオ・医療など幅広い分野での応用が期待されています。
しかし、これほど魅力的な素材でありながらも、社会においては素材として上市されるにとどまっています。これはデバイスとしての機能を引き出すための段階である、改質・成形に関する研究開発が不十分なために他なりません。我々はナノカーボン物質の改質・成形に関する技術開発に注力するとともに、IoT向けデバイス利用に向けた性能評価も合わせて検討し、高性能ナノカーボン電極材料の創出を目指しています。
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IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を用いた自動化の発展を背景に、センシング技術の重要性は高まる一方です。なかでも、環境モニタリングシステムや生体センサーの需要にともなって、有害物質や代謝物などに含まれるカチオン(正電荷種)やアニオン(負電荷種)といった電荷を有する化学種(イオン種)を検出するイオンセンサーが注目を浴びています。
本研究では、イオンペアと相互作用を示す新規分子を基盤として、あらゆるイオン種に対するリアルタイムセンシング材料を開発します。
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熱機関を利用した従来の発電方法によるバイオマス、褐炭からの発電効率は10~30 %程度と低く、バイオマス、褐炭発電が普及しない大きな一因となっている。発電効率が低い第一の原因は、天然ガスや高品位の石炭よりも著しく低い発熱量にも拘わらず、まず燃焼により熱エネルギーに変換する点にある。燃焼により熱エネルギーに変換すれば、そもそもエクセルギーの損失が大きいが、発熱量が低いため得られる温度レベルが低く、さらに損失が大きくなってしまう(図左)。したがって、バイオマス、褐炭を用いた発電を従来の実績を大きく上回る50 %以上の高効率とするためには、エクセルギー率の低い熱エネルギーへの変換に依存しない新たな変換方法の開発ができるかどうかに懸っている。
そこで私たちは、金属イオンを媒体にバイオマス、褐炭を適切な化学エネルギーに変換することでエクセルギー損失を小さく抑え、さらにその化学エネルギーを電気エネルギーに変換するプロセスを提案し(図右)、研究開発を進めている。
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省エネルギーで製造できる有機半導体材料の中でも、分子が自発的に凝集構造を形成する自己組織化有機半導体材料に注目することで、溶液プロセスでの製膜性と良好な電気特性を有する有機半導体薄膜が作製できます。本研究開発では、特に実現が困難な高品質なN型の有機半導体材料の実現を目指します。この自己組織化を有するN型有機半導体材料では、移動度が高く、結晶粒界方向を制御でき、さらに分子配向制御が可能です。これらの特徴を利用することで、高効率の光電変換素子や熱電変換素子が省エネルギーで製造できるようになると期待できます。
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接着技術は、モノとモノをつなぎ合わせる手法であり、精密機器から家電、大型機械まで様々な対象に利用されています。特に近年では、様々な業界において金属部品の樹脂化と合わせて、軽量化に利用されてきました。また、高強度・高耐性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックの利用も軽量化を後押ししていると言えます。
一方で、高強度・高耐性を有する樹脂ほど接着が困難であり、質量の増加・耐性の低下を招く接着剤の利用や、性能低下を生じる添加剤による素材の可溶着化、工程の増加・管理が複雑となる特殊な前処理の導入が行われています。すなわち、「どこにでも使える優れた樹脂ほど応用方法・範囲が限定される」という矛盾を抱えていました。
そこで本研究では、本研究室の固有技術である、高強度樹脂フィルムを対象とした「前処理・添加剤・接着剤フリー」なレーザ接着技術を発展させ、この矛盾の解決を目指します。
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世界の中でも「課題先進国」と呼ばれる日本が抱える社会課題のひとつは少子高齢化問題です。数値的には、生産年齢人口の割合低下(2060年には対総人口51.6 %)、高齢者の増加(2050年には対総人口40 %が65歳以上の高齢者)が予測されています(平成29年度国土交通白書より)。これによって具体化する社会課題は高齢化にかかわる医療・介護労働力需要増と社会保障費の増大であり、我々研究者には、新しい化学技術の開拓によってこの社会課題を解決するという使命が課されていると考えています。
本研究開発では、遠隔医療・日常的健康モニタリングのための新しいウェアラブルデバイスの姿を世界に示し、その実用化に向けて企業との共同研究開発を推進してきたいと考えています。
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試料を染色した色素からの発光を検出・観察する蛍光顕微鏡技術は、発光検出の高感度性や染色部位の選択性による環境識別などの観点から化学や生命科学、医学分野を中心に広く用いられています。当該技術においては光子エネルギーの大きな紫外~青色光が励起光として広く用いられていますが、これらの光は発光性色素のほかに細胞などの生体試料を構成する物質や顕微鏡の光学部品をも励起して発光を与えてしまうことがあります。このような現象は「自家蛍光」と呼ばれ、得られた顕微鏡画像のノイズとなって解像度を低下させる原因となります。また、紫外~青色光は生体透過性が低く、試料内部に励起光が到達しないため、内部の情報を得ることができないという課題も残されています。
本研究ではこれらの課題を一挙に解決するために、複数個の低エネルギーな光子を利用して高エネルギーな励起状態を生み出す「フォトンアップコンバージョン現象」を利用して低ノイズ・高輝度な画像を与える蛍光顕微鏡システムを、「色素システム」と「光学システム」の両面から開発します。
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極低温インターフェースを開発することで、量子計算回路と制御装置の間にある拡張性のギャップを埋めることが本提案です。量子計算機は、量子性を情報処理に応用し計算を高速に実行できる新原理の装置です。情報処理量が爆発的に増加し続ける現代社会においてその計算能力は要求がさらに高くなっています。量子計算機を実現し得る分野の一つとして、近年、超伝導量子回路は目覚ましい成長を遂げてきました。実装されている量子ビット数は百個に届こうとしていますが、この集積数では到底、社会や産業の実用に足らないのが現状です。現在、量子計算回路と制御機構との間にはスケールアップする際に繋目の問題があり、量子計算回路だけでなくその周辺機器も集積に合わせて刷新しなければいけません。その機器の一つが量子ビットを制御する配線です。配線数を量子ビットの数につれて増やすのは、周辺機器を構築する際に現実的ではないのです。このような現状を打開するために、シームレスな拡張を可能とする新規な極低温用超伝導インターフェースを提案し、極低温下で動作するマルチプレクサー型の信号分配器を開発します。この超伝導マルチプレクサーは、低消費電力、拡張性、マイクロ波技術の移植性という量子計算機の実現にとても魅力的な特徴を備えています。この提案は、量子ビットの集積に欠かすことのできないシームレスな配線の拡張を目指すものです。
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高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、数々の分析装置を実用化につなげるのに最も貢献した分離・検出技術です。HPLCは、ターゲット化合物群を成分ごとに分離する「カラム」と、それぞれの化合物の量をシグナルに変換する「検出器」がオンラインでつながったシステムです。分子と弱く相互作用する微粒子が詰まったカラム中に溶液を流し、異なる速度で各分子が進むことで、空間的に化合物が分離されます。残念ながら、試料成分の移動速度を全体的に遅くする本手法では、とりわけ分離すべき成分が多い場合に分析時間が長期化します。特に微量分子がターゲットの場合、カラム内をゆっくり通過している間に、分子拡散により濃度がうすまり分析困難になります。さらに、測定成分すべてに対する標準試料による検量線作成の手間や、高圧ポンプが必要でありオンサイト分析に不適です。
以上の問題に対し、本研究では、HPLCに必要であった高圧ポンプ、カラム、検量線作成の手間を省き得る、選択性に優れた複数の電気化学検出器(電極触媒)が集積化された電気化学システムを開発します。
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