2021年度公募 seeds-1219 - 【中部】 高信頼・低損失パワー半導体モジュールを実現するナノコンポジット封止絶縁技術の開発
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VISION

ビジョン

高耐圧ナノコンポジット封止材を開発し、高信頼・低損失パワー半導体モジュールを実現することで、電力変換設備の高信頼・高効率化を実現する

現行の封止絶縁材料では到達できない革新的な高耐圧性能である耐圧1.5倍以上を目指す

洋上風力発電の発電電力を効率よく流通する次世代電力ネットワークの構築には、交直電力変換設備に用いられる必須の部品であるパワー半導体モジュールの高信頼性と低損失化が必要になります。次世代パワー半導体素子として期待される SiC 素子は、内部電界が現行 Si 素子に比べて一桁以上高い電界で動作するため、素子表面を封止する絶縁材料に高い電界ストレスが加わります。そこで、封止絶縁材料の高耐圧化が極めて重要な課題となります。本研究では、封止絶縁材料に酸化物ナノフィラーを添加・分散したナノコンポジット封止絶縁材料を開発し、高耐圧化 1.5 倍以上の達成を目指します。高耐圧化の技術的ネックとなる凝集体欠陥サイズを遠心分離により制御する独自技術をもとに、凝集体欠陥サイズ評価と材料パラメータ探索に機械学習を導入した材料開発プロセスを構築し、新規高耐圧封止絶縁材料を実現します。

電力変換設備に用いる高信頼・低損失パワー半導体モジュールを実現

現在、パワー半導体モジュールの封止絶縁材料として、シリコーンゲルが使用されています。シリコーンゲルは、シリコン系の高分子樹脂材料であり、素子を外部環境(高電圧、湿度、温度変化による機械的ストレスなど)から保護する役割を担っています。3.3 kV以上の高耐圧性能(3.3 kV、6.5 kV、10 kV)を有するパワー半導体モジュールを実現するためには、シリコーンゲルに代わる高耐圧封止絶縁材料の開発が必須となります。さらに、封止絶縁材料の高耐圧化により、パワー半導体素子周辺部の絶縁距離の短縮、すなわち通電領域(エミッタ電極)の拡大を実現することができるため、損失の低減の面からも求められています。この損失低減効果を、IGBTチップ終端モデルをもとに試算したところ、耐圧1.5倍の達成により素子損失低減17%が実現し、損失低減効果が極めて大きいことが明らかになりました。また、高耐圧化したナノコンポジット封止絶縁材料を既存のパワー半導体モジュールに適用すれば、その信頼性の大幅な向上が実現されます。

USE CASE

最終用途例

高信頼・低損失パワー半導体モジュール用封止絶縁材料

USE CASE 01洋上風力発電の次世代ネットワークの構築に貢献するパワー半導体モジュール

APPLICATION

APPLICATION

パワー半導体モジュール用の封止絶縁体を開発

洋上風力発電の発電電力を効率よく流通させるための次世代電力ネットワークとして、AC/DC電力変換設備又はAC/DC-DC/AC電力変換設備の増強が必要ですが、これらの変換設備における必須の部品であるパワー半導体モジュールに用いられる封止絶縁材料を開発しています。

USE CASE 02高信頼・低損失パワー半導体モジュールを実現する封止材の材料設計指針の提供

APPLICATION

APPLICATION

封止材の材料設計指針の提供

ナノフィラー添加・分散によるシリコーンゲル封止絶縁材料の高耐圧化の材料条件を効率的に見出すための、開発を加速するナノコンポジット封止絶縁材料開発プロセスを構築します。この開発プロセスにより、高信頼・低損失パワー半導体モジュールを実現する封止材の材料設計指針を提供することが可能です。

STRENGTHS

強み

ナノコンポジット技術と凝集体欠陥を遠心分離する技術を用いた酸化物ナノフィラーを分散した高耐圧ナノコンポジット封止材

STRENGTHS 01

ナノコンポジット封止絶縁材料の優位性

現行のパワー半導体モジュール用封止絶縁材料の性能に対して、本開発材料であるナノコンポジット封止絶縁材料は、ナノフィラーの添加量が極微量であるため、現行の封止絶縁材料であるシリコーンゲルが本来持つ機械的な柔軟性を低く保ちながら、現行材料では到達できない革新的な高耐圧化(耐圧 1.5 倍以上)を実現する点に優位性があります。

STRENGTHS 02

遠心分離法を用いた凝集体欠陥サイズ制御技術の独創性

高分子絶縁材料にナノフィラーを分散させる主な方法は、機械的攪拌、フィラー表面処理、ゾルゲル法です。これらは、ナノフィラーの分散に有効な方法ですが、分散途中においてナノフィラーの分散と凝集体の解砕が同時に進むため、高耐圧化の技術的ネックである凝集体欠陥サイズの制御には不向きです。本研究が用いる遠心分離法は、凝集体欠陥サイズのみを制御でき、さらに、機械的攪拌、フィラー表面処理、ゾルゲル法とも組み合わせることができる独創的な方法です。

TECHNOLOGY

テクノロジー

遠心分離法を用いた凝集体欠陥サイズ制御技術と効率的なナノコンポジット封止絶縁材料開発プロセスの構築

TECHNOLOGY 01

分離する凝集体サイズを制御する独自技術と一次分散処理(遊星攪拌)と組み合わせた凝集体欠陥サイズ制御プロセス

酸化物ナノフィラーの添加・分散による高耐圧化のためには、凝集体欠陥のサイズ制御が技術的ネックとなっています。所定のサイズの凝集体は、その周囲に絶縁破壊の原因となる電子なだれ領域を形成し、耐電圧
を著しく下げてしまいますが、この課題に対して、凝集体欠陥サイズのみを制御可能な独自の凝集体欠陥サイズ制御プロセスをすでに確立しています。酸化物ナノフィラーをシリコーンゲル原液に添加し、この凝集体欠陥サイズ制御プロセスを施すことで、ナノフィラーの凝集体欠陥サイズが制御された各種の試料を作製し、その耐電圧を評価します。

TECHNOLOGY 02

機械学習を導入したナノコンポジット封止絶縁材料開発プロセスの構築

耐圧が最も高くなる材料条件を見出すには多大な開発時間を要します。そこで、材料開発プロセスの中の、凝集体欠陥サイズを電子顕微鏡画像から定量化する工程(サイズ定量化)と、耐圧を決定づける材料パラメータを探索する工程(パラーメータ探索)の両者に機械学習を適用することで、耐圧向上に有効な材料パラメータを効率的に探索するナノコンポジット封止絶縁材料開発プロセスを構築し開発を加速させます。

PRESENTATION

共同研究仮説

再生可能エネルギーの導入拡大に貢献したい

共同研究仮説01

再生可能エネルギーの主力電源として期待される洋上風力発電の強化に対応

再生エネルギー導入拡大に向けて検討されている洋上風力発電の大幅な強化計画が検討されています。本研究により、洋上風力発電の発電電力を効率よく流通させるための次世代電力ネットワークに必要な電力変換設備を増強し、日本国内の洋上風力発電の導入を加速したいと考えています。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

栗本 宗明 東海国立大学機構名古屋大学 未来材料・システム研究所 特任准教授
経歴

2018年4月 – 現在 名古屋大学 未来材料・システム研究所 准教授
2013年4月 – 2018年3月 名古屋大学大学院 工学研究科 助教
2010年4月 – 2013年3月 豊橋技術科学大学 電気・電子情報工学系 助教
2003年4月 – 2007年3月 アイシン精機株式会社 技術開発研究所 要素技術開発部
2010年3月 名古屋大学 工学研究科 電子情報システム専攻
2003年3月 名古屋大学 工学研究科 電気工学専攻
2001年3月 名古屋大学 工学部 電気電子・情報工学科

川島 朋裕 豊橋技術科学大学 電気電子情報工学系 助教授
経歴

2017年10月 – 現在 豊橋技術科学大学 工学(系)研究科(研究院) 助教
2013年4月 – 2017年9月 豊橋技術科学大学 工学(系)研究科(研究院) 助手
2017年9月 豊橋技術科学大学 博士(工学)取得
2011年4月 – 2013年3月 豊橋技術科学大学 工学研究科 電気・電子情報工学専攻
2007年4月 – 2011年3月 豊橋技術科学大学 電気・電子工学課程