2022年度公募 seeds-2378 - 【中部】 耐熱金属一体造形による低コスト・高効率電熱ヒータ:高温水素噴射による高性能宇宙推進機
  • 自動車・機械
  • インフラ(資源・エネルギー)
  • 素材
  • 機械
  • 金属
  • 船舶・航空
  • #耐熱金属
  • #タングステン
  • #三次元積層造形
  • #宇宙推進
  • #高温ガス噴射
VISIONビジョン

このシーズに
問い合わせる

VISION

ビジョン

低燃費・大推力をバランスよく両立する宇宙推進機を実現

宇宙空間を自在に往来する輸送機の実現

低燃費・大推力の特性は,燃料の節約による宇宙機の大幅な積載能力の向上と、目的地までの移動時間の短縮を実現します。宇宙推進の燃料には、これまで強い毒性を持つヒドラジンと呼ばれるものや、極めて希少かつ高価なキセノンといった特殊なものが用いられてきました。水素の燃料としての採用は、無毒・低コストのみならず、将来的に月面で採取した水から得た水素を宇宙空間で補給する新たな宇宙輸送システムの実現にも貢献します。これにより、あらゆるものを地上から運んできたこれまでの宇宙輸送の概念を刷新することができます。水素以外にも種々の流体を燃料として利用でき、メタンなども利用可能です。

USE CASE

最終用途例

低コスト・高効率ヒータによる高温ガス源の宇宙・地上産業への応用

USE CASE 01軌道上輸送システムの積載能力向上と輸送期間短縮の両立

APPLICATION

APPLICATION

衛星,探査機,軌道間輸送機の推進機

衛星、探査機、軌道間輸送機の主推進機として利用することで、化学推進以上の積載能力の増大と、従来の電気推進からの大幅な輸送期間の短縮が実現できます。

USE CASE 02大型ロケットの積載能力向上

APPLICATION

APPLICATION

大型ロケットの補助推進機

大型ロケットの補助推進機として利用することで、低燃費の特性により積載能力を向上できます。また、ロケットの主エンジンと燃料(例えば液体水素、液体メタン)を共通化することで、システム簡素化も実現できます。

STRENGTHS

強み

三次元積層造形による世界初の耐熱金属製の薄肉・多層・一体型電熱ヒータ

STRENGTHS 01

高温・高効率ヒータにより低燃費・高推力を両立する推進機を実現

三次元積層造形の一種である金属粒子をレーザにより溶解させながら積層していく「レーザ溶融法」では、一般に高融点の耐熱金属の造形は困難です。また、ヒータが薄肉・多層であることが高温化・高性能化のポイントであるため、構造的に脆弱です。これらの困難を克服し、高温・高効率の電熱ヒータを実現しました。

TECHNOLOGY

テクノロジー

タングステンをはじめとする耐熱金属製の高性能ヒータ

TECHNOLOGY 01

相反する技術要求をバランスさせ低コスト・高性能ヒータを実現

度重なる造形の失敗や破損等を乗り越え、金属の中で最も融点が高いタングステンのヒータの造形に成功しています。成果は世界的に認められ、AIAA(米国航空宇宙学会)のJournal of Propulsion and Powerや、AIP(米国物理学協会)のReview of Scientific Instrumentsといった国際学術雑誌に掲載されました。タングステンの本質的なもろさを克服するため、合金化の研究も推進しており、すでにロケット搭載時の厳しい振動・衝撃環境に耐えることを確認しています。

PRESENTATION

共同研究仮説

高効率・低コストの高温ガス源の宇宙・地上産業への貢献

共同研究仮説01

世界初の液体水素電気推進システムの実用化

電源系・供給系・熱制御系を含めたシステム・インテグレーション

宇宙での実利用には推進機本体だけでなく、電源、推進剤供給装置、熱制御をはじめ、艤装、計測・監視、品質検査等も含むシステム・インテグレーションが必要となります。特に、液体水素の貯蔵・供給技術は推進機本体と並び重要な技術であり、以上に関し知見・経験を有す宇宙関連企業との共同研究を希望いたします。

共同研究仮説02

コンパクト・低コスト・高効率の産業用高温ガス源の実用化

2000K以上の高温・高密度ガス源として、宇宙のみならず地上産業応用としての実用化に向けた共同研究を希望いたします。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

杵淵 紀世志 名古屋大学 大学院工学研究科
航空宇宙工学専攻(准教授)
経歴

2003年 東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程修了
2003年~2019年 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙輸送ミッション本部
2009年 東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 博士課程修了
2015年~2016年 プリンストン大学 機械航空宇宙工学科 客員研究員
2019年~ 名古屋大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 准教授

研究者からのメッセージ

ロケット技術と電気推進技術の融合による日本独自の宇宙輸送システムを実現

JAXAではH2Aロケットをはじめとする液体水素・液体メタンロケットの開発に携わってきました。はやぶさ2のイオンエンジンや技術試験9号機のホールスラスタといった電気推進の開発・運用経験も有しています。今回ご紹介した技術は、これらのロケット技術と電気推進技術を融合した世界に類のない日本独自のものです。共同研究を通し、軌道上実証も含めた実用化に向けた活動を加速したいと考えています。近年は月面での液体水素の生産・貯蔵の研究も進めています。共同研究成果は、月近傍での水素の補給も可能な宇宙空間を自在に往来する軌道間輸送システムの実現に繋がります。これにより、宇宙が我々にとってより身近かつ重要な存在になっていくと考えています。宇宙利用だけでなく、高温ガス源としての産業応用にも貢献したいと考えています.