2020年度公募 seeds-0244 - 【九州・沖縄】 低エネルギー損失かつ高出力密度の高性能モーターを実現する、 純鉄粉末の組織制御技術の開発
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VISIONビジョン

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VISION

ビジョン

革新的な鉄粉の開発を通じ、サステナブルな社会実現に向けたソリューションを創造

エネルギー変換損失の少ない純鉄粉末の開発を通じて、モータ性能の飛躍的な向上に寄与

「産業のコメ」とも呼ばれるモータは、家電、ロボット、自動車、発電機と、あらゆる産業に不可欠な存在となっています。
本研究テーマは、モータ特性に大きな影響を与える主要部品である鉄心の性能向上を目指します。具体的なアプローチとして、鉄心の材料となる「純鉄粉末」の磁気特性に着目し、鉄心の性能向上のために最適化された加工プロセスと熱処理の手法を研究します。

生活・産業における省エネ・創エネへの貢献

私たちの生活や産業のあらゆる場面で活躍するモータが消費する電力量は、日本の全消費電力量の約55%、産業用モータだけで見れば産業部門の消費電力量の約75%をしめると推計されています(※)。本研究は、モータの性能向上に寄与することを通じて、省エネ・創エネへの貢献を通じてサステナブルな社会を実現することに貢献します。
(※出所 一般社団法人日本電機工業会「地球環境保護・省エネルギーのためのトップランナーモータ」)

USE CASE

最終用途例

より小型・省エネ・高出力なモータ

USE CASE 01産業用モータ(ロボット、ドローン、生産ライン設備など)

APPLICATION

APPLICATION

産業のあらゆる場面で活躍するモータを小型化・省エネ化

本研究の成果によってモータの性能向上が実現すれば、産業用設備・ロボットの小型化が可能となったり、より少ない電力消費で駆動することが可能となります。また、これまで不可能であった高出力なモータの実現につながれば、自動車や飛行機のような大きな移動体の分野にも大きなイノベーションを起こす可能性も期待できます。

STRENGTHS

強み

従来技術では不可能とされていた、低エネルギー変換損失と高出力密度の両立

STRENGTHS 01

粉末+集合組織によって渦損とヒステリシス損を同時に低減可能

従来、純鉄粉を用いた圧粉鉄心は、鉄の磁気特性を改善するシリコンを添加することができないことから、電磁鋼板と比較して、ヒステリシス損(※)の低減や透磁率の向上が困難でした。本研究では、シリコンの添加ではなく、鉄粉中の磁化容易軸と呼ばれる鉄の磁気特性の優れた結晶方位を制御することで、ヒステリシス損と透磁率を改善する技術を開発しました。
(※ヒステリシス損:鉄心の磁界の方向が変化することによって生じるエネルギー損失のこと。)

TECHNOLOGY

テクノロジー

世界初!金属粉末の結晶方位の制御技術を適用し、これまで実現不可能だった純鉄粉末の特性実現を目指す

TECHNOLOGY 01

鉄粒子のボールミル処理による磁気的特性に優れた結晶組織の創出

ボールミルで顆粒状の鉄粒子を偏平化する際に鉄粒子の表面を潤滑することで、偏平面に鉄の磁化容易軸(=鉄の結晶が磁化しやすい方向軸)を配向させることに成功しました。この偏平粒子を成形して鉄心を作製すると、鉄心中でも磁化容易軸が配向するため、鉄心の磁気特性が改善されます。
さらに、一般に鉄心はその内部ひずみの低減のため、再結晶熱処理を行いますが、その際に磁化容易軸の配向は大きく変化してしまいます。本研究では表面エネルギーを制御することで、再結晶に伴う磁化容易軸の配向の変化を抑制する手法を確立しています。

TECHNOLOGY 02

表面エネルギー制御による結晶組織制御技術

本研究は、鉄粒子の表面に塗布する物質を工夫することで、ボールミル処理で形成した磁化容易軸の配向が、再結晶熱処理で変わることを抑制する技術を開発しました。この表面物質の工夫を進めて、磁化容易軸の配向の変化を抑制するのみならず、より配向性を高めて、磁気特性を改善することを目指します。
熱処理温度を高めるにつれて、一次、二次、三次再結晶と、それぞれ異なる機構の再結晶現象が順番に生じます。特に三番目の三次再結晶では磁化容易軸の配向性が大変優れた組織が得られることが分かっています。しかし、三次再結晶は大変高い温度でしか誘起できず、実用化が困難です。本研究は、この課題を克服します。

PRESENTATION

共同研究仮説

本研究シーズを特定プロダクトに適用した試作・フィードバック獲得による社会実装を目指します。

共同研究仮説01

本研究シーズの「純鉄粉末」と共同研究テーマについて

モータ特性に大きな影響を与える主要部品である鉄心の性能向上を目的に、鉄心の材料となる「純鉄粉末」の磁気特性に着目し、鉄心の性能向上のために最適化された加工プロセスと熱処理の手法を研究しています。この技術の社会実装に協働して頂ける企業様との連携を期待しています。

LABORATORY

研究設備

各種金属組織評価設備

LABORATORY 01

【遠隔対応可能】電界放出型走査型電子顕微鏡

電界放出型走査型電子顕微鏡では金属材料表面の凹凸や組成分布を観察することができます。また、ECCIs法により、材料表面の欠陥(転位)を観察することもできます。ただし、これらの観察結果の読み取り方・判定には多くの経験と知見が必要となります。
なお、遠隔画面共有システムを用いて、遠隔での指示に対応することが可能です。

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LABORATORY 02

電子線後方散乱回折装置(EBSD)

電界放出型走査型電子顕微鏡にEBSDカメラが付随しており、このカメラを用いて金属試料表面の結晶方位分布を評価することができます。ただし、これらの観察結果の読み取り方・判定には多くの経験と知見が必要となりますが、チームメンバーはそのための十分な能力と実績を持っています。

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LABORATORY 03

X線回折装置の画像

X線回折装置では,材料の構造解析を行うことができます。また、金属材料の結晶方位の配向状態も評価することが可能です。これらの観察結果の読み取り方・判定には多くの経験と知見が必要となりますが、本研究チームのメンバーは、そのための十分な能力を備えています。

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EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

本塚 智 九州工業大学 工学研究院 准教授
経歴

2006-2010年 日本ガイシ株式会社 設備設計グループ所属
2010-2019年 岐阜高専 機械工学科 着任、(2013年 東工大 理工学研究科 学位取得)
2019年~九州工業大学 工学研究院 准教授 (現職)
「ランダムキューブ組織を有する偏平圧粉コアの創出とその磁気特性」にて2016年平成28年優秀論文発表賞)

研究者からのメッセージ

分野横断的な活動に意欲

モーターをはじめとする電磁気応用製品は、材料的には金属(鉄心)、セラミックス(磁石)、樹脂(絶縁体)、学術的には電気工学、機械工学、化学工学、物理学等の結晶であり、その技術開発の推進には分野横断的な活動が不可欠です。私の専門は金属工学ですが、それにこだわらず幅広い分野の方とご一緒にこの仕事に携われたらと思います。

佐藤 尚 名古屋工業大学 大学院工学研究科准教授
経歴

2000-2001年 大同特殊鋼株式会社 粉末事業部所属、2004年4月 東京工業大学大学院 総合理工学研究科 博士研究員、2004-2005年 独マックスプランク鉄鋼研究所 ポスドク、2005-2009年 名古屋工業大学 大学院工学研究科 助教、2009年-現在 准教授(現職)
「In-situ observation of butterfly-type martensite in Fe-30wt.%Ni alloy during tensile test using high-resolution EBSD」にて2010年澤村論文賞。

研究者からのメッセージ

基礎原理に基づく技術開発を目指して

金属材料の構造解析を得意としています。その中でも電子線後方散乱回折法を用いた結晶方位解析が得意であり、本研究テーマでは粉砕鉄粉などの結晶方位分布などを中心に担当します。すべての機能性材料は、その機能発現のための基礎原理に基づいて製造設計がなされております。このような基礎原理も大切にしながら”強い技術”の構築を目指して頂ける方とご一緒に仕事ができればと思っております。