蛍光ナノダイヤモンドを利用して、ナノ・ミクロスケールの温度を測定する量子センシング技術
温度測定は工業技術の基礎ですが、ナノメートルからマイクロメートルという大きさでの温度測定には、現在も有用な手法が存在していません。電気抵抗や熱起電力から温度測定を行う一般的な接触式電子温度計では、素子の大きさが最小でも数十マイクロメートルに限られます。サーモグラフィーを用いれば非接触で温度計測ができますが、使用される赤外線波長が10マイクロメートル程度であるため、これより小さいスケールの温度計測を行うことは困難です。一方で、近年の半導体集積回路の超微細化やグラフェンなどの新規ナノ電子材料技術の発展により、微小領域でのジュール熱やペルチエ効果などを正確に測定することが必要となっています。また、バイオ分野などでもマイクロ流体チップ高速PCRの微細化やナノ加工食品の熱分析といった用途で温度計測のニーズが生じています。
私は、企業の研究者が量子センサ技術によるナノスケールの温度計測・熱分析技術を自身のラボで利用できるような試験機を開発して、半導体製造工程の温度管理や化粧品ナノ材料の熱分析技術につなげようと研究しています。