2020年度公募 seeds-0987 - 【関東】 劣化を抑制した逆構造型ペロブスカイト太陽電池の開発:エネルギーハーベスティングによるIoT社会の実現
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VISIONビジョン

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VISION

ビジョン

エッジ・ノードに実装可能なシート状太陽電池を開発し、IoTの普及拡大に貢献する

フレキシブルかつ高耐久な逆構造型ペロブスカイト太陽電池の実現

本研究開発では、IoT機器への実装にマッチした光発電シートとして、逆構造型ペロブスカイト太陽電池の開発を目指しています。ペロブスカイト太陽電池は、結晶シリコン太陽電池に匹敵する高効率を持ち、薄く軽くフレキシブルにできることから、IoT用電源として適すると考えられます。しかし、ペロブスカイト太陽電池は劣化しやすいことが実用化に対する最大の課題となっています。本研究では、耐久性向上に大きく寄与する無機系ホール輸送層を用いること、およびそれを可能にする電子輸送層のソフト成膜プロセスを開発し、室内光でも高効率で発電し、高い耐久性をもった新しいIoT電源用ペロブスカイト太陽電池の開発に挑戦しています。

光発電シートがもたらす革新的なサービスIoTの創生

センサーネットワークを生活の中で様々に活用するIoTの導入が、今まさに始まっています。今後のさらなるIoT社会の実現には、通信環境に加えて、その通信やセンシングなどに必要な電力をいかに簡便に供給するかが重要です。本研究で取り組む”光発電シート”が実現できれば、高効率・軽量・フレキシブルな特徴を生かして、わずかな光さえあればどこでも電力を得る事が可能となります。IoTの応用範囲が飛躍的に高まり、思いもよらない革新的なサービスの創生に繋がることが期待できます。

USE CASE

最終用途例

室内光~太陽光 あらゆる光を電力に

USE CASE 01メンテナンスフリーなIoTエッジ・ノード

APPLICATION

APPLICATION

室内光下に独立して置かれるセンサーへの応用

部屋の照明で駆動でき配線が不要なので、どこにでも、自由な形に設置が可能となります。また、耐久性が高いことから、長期間安定した動作が見込めます。

USE CASE 02太陽光下におけるフレキシブル性・高耐久性を生かした展開

APPLICATION

APPLICATION

車載や農地など過酷な環境下での利用

実現を目指す太陽電池は、小型のIoTデバイス向けに限定されません。大面積化すれば、信頼性を求められる車載用途や、農地などの過酷な環境でも活躍が期待できます。

USE CASE 03可視光を吸収しない透明な電子輸送層/正孔輸送層

APPLICATION

APPLICATION

発光デバイス、透明エレクトロニクスデバイス中での活用

本研究に用いられている二酸化チタン結晶(電子輸送層)、ヨウ化銅薄膜(正孔輸送層)の用途は、太陽電池にとどまりません。その透明性を活かして、発光デバイスや、透明エレクトロニクス分野にも応用ができます。

STRENGTHS

強み

ブルカイト型、ブロンズ型、アナターゼ型、ルチル型の4種類の二酸化チタン結晶多形を作り分け

STRENGTHS 01

合成が困難な結晶型を含む二酸化チタンナノ粒子を分散液化

独自の酸化チタンナノ粒子合成技術により、合成が難しいとされるブルカイト型やブロンズ型を含め、アナターゼ型、ルチル型と合わせて4種類の二酸化チタン結晶を高純度で得ることが可能です。低温かつ塗布手法によって薄膜化できるので、プラスチック基板への成膜も可能で、軽くフレキシブルなデバイスを実現できます。

TECHNOLOGY

テクノロジー

透明性と耐久性を実現する電子輸送層/正孔輸送層の要素技術

TECHNOLOGY 01

ブルカイト型など様々な結晶多形の二酸化チタンを作り分け

二酸化チタンは合成が容易なアナターゼ型とルチル型の2種類のみが応用されています。我々のグループでは、独自のチタン原料を原料に用いることで、これらの2つに加えてブルカイト型、ブロンズ型の4種類の結晶構造の二酸化チタンナノ粒子を水熱法で合成しています。4種類すべて単相かつナノ粒子(粒径数~数十nm)で合成でき、スピンコートやスプレーコートなどで容易に薄膜作製が可能です。さらに、既に結晶の粒子を塗布するため、結晶化のための高温が不要で低温成膜(150~200℃)が可能です。これを電子輸送層に用いてペロブスカイト型太陽電池を試作し、良好な特性が得られることを実証済みです。

TECHNOLOGY 02

高い光透過性を有するp型半導体であるヨウ化銅薄膜

ヨウ化銅は、ワイドバンドギャップで透明なp型半導体であり、希少元素を含まず、高い正孔移動度を持つなどの稀有な特徴を持つことが知られています。我々はこのCuI に着目し、マグネトロンスパッタ法で作成した窒化銅薄膜をもとに、ヨウ素溶液への浸漬処理によってCuI 薄膜を形成する簡便な手法を用いて、CuIの太陽電池応用に向けた幅広い検討を行っています。これまでの固体ヨウ素を用いる方法と異なり、液浸であることから、大面積で面内均一性の高い薄膜が形成可能です。デバイスの試作結果から、波長約400 nm以上の広い波長領域で高い透過性を持ち、p型層として機能する薄膜が得られることを確認しています。

PRESENTATION

共同研究仮説

デバイス実現に向けた研究への参画から要素技術の応用まで幅広く共同研究を募集

共同研究仮説01

ペロブスカイト太陽電池の共同開発

太陽電池開発への参画やIoTデバイス実装に向けた仕様策定

光発電シートとなるフレキシブルな逆構造型ペロブスカイト太陽電池の実現に向けて、基礎的検討から参画いただける企業を募集しています。また、IoTデバイスへの実装を念頭に、電池仕様の策定で協業いただける企業も必要としています。

共同研究仮説02

電子輸送層/正孔輸送層としての利用

4種の二酸化チタンとヨウ化銅薄膜のあらゆる用途への応用検討

太陽電池電極に限らず、4種類の結晶多形の二酸化チタンを電子輸送層等に応用したいと考える企業を探しています。また、透明性が高いp型半導体層である、ヨウ化銅薄膜の各種応用を検討して頂ける企業を求めています。どちらも用途は問いませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。

LABORATORY

研究設備

単層膜形成/太陽電池作製/性能評価/分析がすべて可能な実験設備

LABORATORY 01

ペロブスカイト太陽電池や各層単膜の作製が可能

ペロブスカイト太陽電池の作製に必要な設備は、ドライ環境を作るグローブボックスを含めて、基板洗浄から金属電極形成までの全プロセスが可能な機器類が整備されています。もちろん、太陽電池に用いられる各層の単膜のみを形成する事も可能です。

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LABORATORY 02

太陽電池の発電性能と量子効率の評価

試作した太陽電池サンプルの発電性能は、疑似太陽光の照射装置を利用して高精度かつ再現性良く評価できます。また、損失要因の調査など詳細の解析に必須である、入射波長ごとの光電変換性能を示す量子効率の評価装置も完備し、蛍光灯やLEDなどの各室内照明に対する定量的評価が可能です。

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LABORATORY 03

各種の高度な分析装置が充実

デバイスの性能を深く理解するためには、様々な分析が必要です。これに用いることができる電気特性、光学特性の各種評価装置はもちろん、電子顕微鏡類やX線回折装置、光電子分光装置などの高度な分析装置も充実しています。

RESEARCHER

研究者

冨田 恒之 東海大学理学部
経歴

経歴
2005年3月 東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了 博士(理学)
2005年4月 科学技術振興機構 博士研究員
2005年8月 東北大学多元物質科学研究所 助手
2006年4月 東海大学理学部 助手
2007年4月 同 助教
2009年4月 同 講師
2016年4月 同 准教授
2022年4月 同 教授 現在に至る
2012年8月~2014年7月 文部科学省研究振興局 学術調査官(兼任)

所属学会
日本セラミックス協会、日本化学会、粉体粉末冶金協会、日本MRS、日本ゾル-ゲル学会、日本希土類学会、無機マテリアル学会、応用物理学会

受賞歴
日本セラミックス協会・進歩賞(2012年)、学校法人東海大学松前重義賞・学術部門・松前重義学術奨励賞(2013年)、物質・デバイス領域共同研究拠点・物質・デバイス共同研究賞(2019年)

研究紹介参考リンク
https://www.u-tokai.ac.jp/facultyguide/faculty/3079/ http://www.rist.u-tokai.ac.jp/research1.html

研究者からのメッセージ

室内光で効率的に発電し、薄く軽くフレキシブルでどこでも使える光発電シート

ペロブスカイト太陽電池はシリコン太陽電池とは異なり、電気電子や半導体分野のみならず、化学や材料分野からのアプローチも極めて重要です。東海大学では理学部化学科と工学部電気電子工学科でチームをつくり、異なる見地から共同して研究を進めています。ペロブスカイト太陽電池は光吸収を担うペロブスカイト層の研究が最も多く、電子輸送層と正孔輸送層の研究はまだ十分に進んでいません。一方、長期間安定な発電特性を保持するには、これら電子輸送層と正孔輸送層の材料開発が極めて重要です。我々はこの両者に、化学的に安定な無機材料を用いることで、劣化しにくいペロブスカイト太陽電池の作製を目指しています。ペロブスカイト太陽電池は太陽光よりも白色LEDなどの室内照明に対して発電効率が良いことから、従来のシリコン太陽電池を置き換えるのではなく、IoTデバイスに必要な電力を生み出す新しい小型電源としての応用を目指し、長期の発電特性の安定性向上を目指しています。ペロブスカイト太陽電池の実物を見てみたい、どんな樹脂に発電特性を付与できるか、薄さや軽さはどれぐらいかなど、興味がございましたらぜひお問い合わせください。