2024年度公募 seeds-5210 - 【】 高湿度環境下の高信頼性匂いセンシングを実現する水分子選択的除湿デバイスの開発
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VISION

ビジョン

ガス・匂いセンシングの難敵に挑む

高湿度環境中のガス・匂いセンシングを助ける除湿デバイス

IoT技術や人工知能によるデータ解析技術の目覚ましい発展に伴い、センサを介して身の回り(フィジカル空間)の情報を収集し、サイバー空間で蓄積・利活用する産業が次々と生まれています。環境中のガス・匂いを検知する人工嗅覚センサは、物理情報を遥かに凌駕する膨大で多角的な「化学情報」を収集する次世代センサ技術として多くの関心が寄せられていますが、湿度70%以上で検出率がゼロになるセンサもあるなど、環境湿度がガス・匂いセンシングへ及ぼす影響は本分野における深刻な問題となっています。本研究では、高湿度環境下における高信頼性のガス・匂いセンシングを可能にする除湿デバイスの開発に取り組んでいます。

USE CASE

最終用途例

センサだけでは実現できない高湿度環境下の高感度ガス・匂い検出を実現

USE CASE 01全天候型環境モニタリング

APPLICATION

APPLICATION

雨天や梅雨の時期でも環境汚染物質・毒物を高感度に検出

開発品の除湿デバイスにより、雨天時や梅雨の時期にも晴天時や乾季と同じセンシングパフォーマンスで環境汚染物質や毒物を高感度検出することが可能です。

USE CASE 02呼気健康診断

APPLICATION

APPLICATION

呼気中に含まれる微量のマーカー分子を高感度に検出

相対湿度がおよそ100%である呼気のセンシングにおいて、除湿デバイスを導入して微量の健康・疾病マーカー分子を高感度で検出できれば、セルフ健康診断や遠隔医療が実現できます。

USE CASE 03食品加工・製造・管理

APPLICATION

APPLICATION

食品の異常を自動検知

本開発品を利用して通常高湿度環境中では食品の本質的な匂い検出を実現し、目に見えない異常を検知できるようになれば、食のトラブルを未然に防ぐことができます。

STRENGTHS

強み

センサの隣に設置するだけで水蒸気の影響なしにガス・匂いセンシングを可能に

STRENGTHS 01

水分子のみを環境から取り除く今までにない除湿機能

従来の除湿材では、水分子と一緒に他の分子も取り除かれてしまいますが、開発品であるナノワイヤ除湿デバイスは、環境から水分子のみを選択的に取り除くことが可能なため、呼気や食品など高湿度環境中の匂いセンシングにおいて微量分子の高感度検出を実現します。また、本デバイスは繰り返し何度も使用可能です。

STRENGTHS 02

IoTデバイス実装も可能な超小型サイズ

匂い成分分析の前処理装置には水蒸気を取り除く機能が付属していますが、その小型化は困難です。ミリメートルの超小型サイズから対応可能な開発品は、IoTデバイスへの実装も容易であり、多様な環境・シーンでの高感度ガス・匂いセンシングを実現します。

STRENGTHS 03

あらゆるセンサとの組み合わせが可能

センサの隣に設置するだけの開発品は、どのような種類のセンサとの組み合わせでも使用することが可能です。湿度の影響を受けやすいセンサでも、その潜在的なパフォーマンスを引き出すことが可能となり、センサ材料開発の幅が広がります。

TECHNOLOGY

テクノロジー

高湿度環境下において高信頼性ガス・匂いセンシングを実現する超小型ナノワイヤ除湿デバイス

TECHNOLOGY 01

環境中から水分子を選択的に取り除くナノワイヤ除湿デバイス

開発品において除湿機能を担う材料は、クローゼットの除湿剤にも使われる塩化カルシウムです。巨大な表面積を持つナノワイヤ上に塩化カルシウム薄膜を形成することで、水分子の効果的な捕捉を可能にし、高い吸湿性能を実現しました。また、親水表面をもつナノワイヤ上では、数十ナノメートルの厚みしかない塩化カルシウム薄膜は吸水後もその形状が維持されるため、ナノワイヤ下部に設置したマイクロヒーターで加熱脱水することにより繰り返し使用可能です。更に、塩化カルシウムはCaCl2・nH2O(n=2~6)という安定な結晶構造を取るため、完全に液体化しない状態では他の分子はほとんど吸着しないことを見出しました。

TECHNOLOGY 02

高湿度環境下における高信頼性ガス・匂いセンシング

開発品であるナノワイヤ除湿デバイスをセンサの隣に設置することで、高湿度環境下における高信頼性ガス・匂いセンシング機能を実証しました。実証実験では、呼気中糖尿病マーカー分子であるアセトンや肺がんマーカー分子であるノナナールのセンシングを実施し、相対湿度90%の環境下におけるセンサの分子検出下限濃度を20倍以上引き下げることに成功しました。

PRESENTATION

共同研究仮説

ナノワイヤ除湿デバイスの商用化と社会実装

共同研究仮説01

・商用化へ向けた生産プロセスの確立
・IoTデバイスへの実装
・開発技術による価値の創出

商用化へ向けた生産プロセスの確立

大量生産製造・カートリッジ化

ナノワイヤ除湿デバイスの大量生産へ向けたプロセス開発、品質保証へ向けた性能調査、カートリッジ化も含めた供給方法などを素材・化学メーカーの企業様との共同研究によって進めたいと考えております。

IoTデバイスへの実装

除湿・センサ一体型デバイスの実現

私達が開発したナノワイヤ除湿デバイスとセンサと組み合わせて高湿度環境下でも高信頼性のガス・匂いセンシングを実現する除湿・センサ一体型デバイスをセンサメーカーの企業様と共同開発したいと考えております。

開発技術による価値の創出

高湿度環境下における匂いセンシングの実証実験

ナノワイヤ除湿デバイス開発の意義を示すために、匂いセンシングの実証実験にご協力頂ける企業様と協働したいと考えております。例:食品の異常検知など

RESEARCHER

研究者

長島一樹 北海道大学 電子科学研究所 インタラクション機能材料研究分野 教授
経歴

■経歴
2010年      博士(工学) (大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻)
2010年-2015年 大阪大学産業科学研究所 特任助教
2015年-2017年 九州大学先導物質化学研究所 助教
2017年-2020年 九州大学先導物質化学研究所 准教授
2019年-2022年 JSTさきがけ「人とインタラクション」領域研究者
2020年-2023年 東京大学大学院工学系研究科 准教授
2023年-現在   現職

■受賞歴:船井研究奨励賞(2012), MNC Young Author’s Award (2012), エヌエフ研究開発奨励賞 (2013), 井上研究奨励賞 (2013), 新化学技術研究奨励賞 (2018), わかしゃち奨励賞 最優秀賞 (2018), 文部科学大臣表彰若手科学者賞 (2022), 知財図鑑 知財番付 <東ノ横綱> (2022), 本多記念研究奨励賞 (2024) など34件

■URL
https://sites.google.com/view/nagashima-lab/
https://knagashima.weebly.com/

研究者からのメッセージ

ガス・匂いセンシングの理想を叶える除湿デバイス

次世代センサ技術として多くの関心が寄せられているガス・匂いセンシングですが、一番の難敵はどこにでも存在する湿度(=水分子)です。湿度はガス・匂いセンサの応答を狂わせるため、センシング環境から取り除くことが理想的ですが、従来の材料・デバイスでは除湿時に検出対象となる分子も環境から取り除かれてしまうといった問題を抱えていました。ガス・匂いセンシングの理想を叶えるべく、一緒に共同研究を進めて頂ける企業様との出会いに期待しております。