2023年度公募 seeds-4738 - 【近畿】 直截的リン元素ドーピングが拓く新規リン系難燃剤の創成
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VISION

ビジョン

高性能リン系難燃剤をハロゲンフリープロセスで創成

高性能かつ低環境負荷難燃剤を開発することで、火災に脅かされることのない安心・安全の社会を実現

火災は台風や地震と並び、我々の生活をおびやかす災害の一つです。その原因の一つに、電気・電子機器の劣化による発火があげられますが、社会の発展と技術の高度化に伴い、これら精密機器の利用は今後も増加の一途を辿ることは間違いありません。従って、これを安全に使いこなす技術開発が必要であり、その一翼を担うのが難燃剤です。本研究では新たなリン系難燃剤を正確に、かつ簡便、迅速に提供する新たな有機合成手法の開発を提案します。難燃剤そのものに加え、合成プロセス全体からもハロゲンを完全に排除した新たな手法を提供することで、高性能かつ環境調和性の高い新規リン系難燃剤を創成し、安心、安全な社会の構築に貢献します。

USE CASE

最終用途例

高性能、環境適応型難燃剤による安心、安全、住み続けられるまちづくり

USE CASE 01万が一の時にも安心!燃えない、自己消火するケーブル

APPLICATION

APPLICATION

各種電子機器の電源ケーブルへの活用

火災の原因には様々なものがありますが、近年、電気・電子機器の電源ケーブルからの発火件数が急増しています。耐熱性、自己消火性に優れたケーブルにより、発火の防止、ないしは被害を最小限に食い止めます。

USE CASE 02火災に負けない外壁

APPLICATION

APPLICATION

外壁塗料に難燃性を付与し、火災に負けない家づくり

熱硬化性樹脂に難燃剤を練り込む、もしくは難燃性を化学結合により直接付与することで、難燃性外壁塗料を開発します。これを家屋に用いれば、有事の際にも延焼を最小限に食い止める強い家づくりが実現できます。

USE CASE 03燃えない木造建築

APPLICATION

APPLICATION

塗るだけでOK!耐火性能と品質向上を同時に実現

高性能かつ安全性の高い、塗るだけで木材に不燃性を付与できる塗料を開発します。また、「塗るだけ」という簡便なプロセスにより、意匠性を損ねる白樺現象も低減します。美しさを保った不燃木材を提供します。

STRENGTHS

強み

安価な単純原料から、ハロゲンフリーでリン系難燃剤を直截合成することが可能

STRENGTHS 01

ハロゲンに依存しない難燃剤

難燃剤そのものに加え、合成プロセス全体からも環境負荷の大きいハロゲンを排除

STRENGTHS 02

高い安定性

炭素ーリン結合を基軸とするため、従来のリン系難燃剤と比較して、加水分解による性能劣化を防止

STRENGTHS 03

単位重量あたりの大きなリン含有量

難燃性を示すリン元素の含有量が大きいため、使用量を低減できる

TECHNOLOGY

テクノロジー

直截リン元素ドーピング法

TECHNOLOGY 01

入手容易かつ安価な原料からリン系難燃剤を直截合成

市販のリン原料から、高反応性リン化学種を発生させる独自手法を開発しました。これにより、石油、石炭、天然ガス等から得られる単純な炭化水素類に対し、リン元素を直接ドーピングすることで、リン系難燃剤の簡便、迅速、そしてハロゲンフリープロセスでの創成が可能になります。また、炭素ーリン結合を基軸とするため、従来製品と比較して、高い安定性が期待できます。

TECHNOLOGY 02

既存ポリマーへの直截リン元素ドーピング

直截リン元素ドーピング技術を用いれば、エポキシ樹脂やウレタン樹脂などの既存ポリマーに対し、化学結合を介してリンを直接導入できます。つまり、難燃剤を別途添加するのではなく、樹脂に対して難燃性能を直截付与することができます。これにより、難燃剤の添加に伴うポリマー本来の性質・機能の低下を大幅に削減できると期待されます。

PRESENTATION

共同研究仮説

迅速な性能評価とフィードバックで、用途に応じた多様な難燃剤を社会実装

共同研究仮説01

革新的合成手法 × 機能評価 = 社会実装

製品化を見据えた機能評価

一口に難燃剤と言っても様々な使用分野があり、各々が要求する最適な機能、物性が異なります。そのため、用途に向けた迅速な評価とフィードバックが社会実装に向けて重要と考えます。特に難燃剤材料メーカー様との議論で構造・物性相関を迅速に獲得することが肝要です。

RESEARCHER

研究者

平野 康次 大阪大学大学院工学研究科 教授
経歴

経歴
2008年3月 京都大学大学院工学研究科
博士後期課程修了 博士(工学)
2008年4月 京都大学大学院理学研究科 博士研究員
2008年10月 大阪大学大学院工学研究科 助教
2015年4月 大阪大学大学院工学研究科 准教授
2022年5月 大阪大学大学院工学研究科 教授

研究実績
専門分野: 有機合成化学(原著論文>200報)
業績等: GSC文部科学大臣賞(2014年)
日本化学会進歩賞(2016年)
文部科学大臣表彰(2017年)
JST創発研究者(2022年〜)

研究者からのメッセージ

大学発のシーズでどこまでいけるのか

本研究提案は、学術的に興味ある現象の発見・理解から始まり、これを企業様との共同研究を通して社会貢献・実装できる新素材・新材料の開発研究へ繋げようという試みです。大学発のシーズが社会課題を解決に導き、我々の生活をより快適に、安全なものとする、これが実際に可能であるということを社会全体に示すことができれば、一研究者としてまたとない喜びです。特に日本は欧米と比較して大学の技術を社会実装させるプロセスが見えづらく、実際に成功例も少ないのが現状です。本事業を活用し、その成功例を見せることで、産学連携の更なる推進の起爆剤となりたいと考えます。また、この成功を間近で若手教員や学生に経験させることができれば、その教育効果は果てしなく大きく、今後日本の産業を背負って立つ人材育成にも大きく貢献できると信じています。