2022年度公募 seeds-3536 - 【九州】 海苔の品質評価のためのラマン分光分析法の開発と実践
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VISION

ビジョン

乾海苔に対してラマン分光法(分子の振動を観測する分光手法)による非破壊で科学的な品質評価法を確立する

国際的に通用する客観的な評価基準に基づいた乾海苔の流通を実現

私たちが普段口にする乾海苔は、生産拠点における検査員の目視による等級付けが行われて市場に出回っている。しかし、目視による等級付けは科学的根拠に裏打ちされた品質評価ではなく、海苔の産地あるいは作況にも依存する経験的な評価方法でもある。本研究は、ラマン分光法を用いて海苔に対する科学的な品質評価法を提案する。このような品質評価法を、乾海苔の生産拠点に導入できれば、海苔の等級付けの最適化だけでなく、自動化と高速化が期待できる。さらに、国産海苔や輸入海苔を問わず使える非破壊で客観的な品質評価法となるため、海苔の流通における革新的変化が期待できる。

USE CASE

最終用途例

ラマン分光分析による海苔の品質評価

USE CASE 01非破壊で科学的に海苔の栄養成分の含有量を定量する

APPLICATION

APPLICATION

ラマン分光分析による乾海苔のうまみ成分をその場計測

海苔のうまみの主成分はアミノ酸であり、そのアミノ酸の量はタンパク質の含有量に比例する。ラマン分光分析を使った栄養成分の定量は海苔の生産現場で利用できる。

STRENGTHS

強み

従来の目視による等級付けではなく、非破壊で科学的根拠に基づいた海苔の品質評価である。

STRENGTHS 01

栄養成分の有無だけでなく栄養成分の濃度をその場で定量できる。

ラマン分光では、糖、タンパク質、カロテノイド等の海苔の栄養成分を簡便に観測でき、ラマン信号の相対強度からそれら含有量を、その場で手早く知ることができる。

TECHNOLOGY

テクノロジー

近赤外の広い領域でのラマンスペクトル測定が栄養素の含有量の定量を可能にした

TECHNOLOGY 01

豊富なスペクトル情報を生かす。

海苔に含まれるタンパク質やカロテノイドの栄養素だけでなく、焼海苔の鮮やかな緑色のもとになるクロロフィルの含有量も、特別な下処理をすることなくラマンスペクトルの解析から知れることがわかってきた。ラマンスペクトルの持つ情報をさらに引き出すことができれば、海苔の硬さや柔らかさ、生育環境についても一回の測定で捉えられる可能性がある。

PRESENTATION

共同研究仮説

海苔の生産現場でのラマン分光分析の実践

共同研究仮説01

検査場で実際に使える分析装置の開発

専門家ではなく、生産者が利用できるラマン分光分析へ

実際の海苔の検査場での使用できるラマン分光分析装置の条件は、レーザー光源、分光器、検出器等が一体化して簡便に使え、成分分析のための自動解析ソフトウェアが実装されることである。分光装置制作に明るい企業の力が欠かせない。

RESEARCHER

研究者

藤澤知績 佐賀大学理工学部 准教授
経歴

京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了.千
葉大学融合科学研究科博士研究員,カリフォルニ
ア大学バークレー校化学科 JSPS 海外特別研究員,
理化学研究所基礎科学特別研究員,佐賀大学大学
院工学系研究科助教を経て現職.
研究内容:振動分光法を用いた光受容体の反応機
構の研究
URL: http://biophysics.chem.saga-u.ac.jp/Fujisawa_webpage/Tfujisawa.html

研究者からのメッセージ

日本の海苔産業の発展は、海苔の科学的な品質評価が鍵になる

海苔の生産と流通の中心にあるのが、現在まで伝統的に行われている目視による等級付けである。生産者は高い等級が付けられる見た目の美しい海苔を生産しようとし、高い等級を得た海苔は高値で売買されて消費者のもとに届けられることになる。しかし、目視に基づいた等級を国際競争のなかで客観的な評価基準として採用できないため、このままでは国産海苔の単価の低迷や海苔産業の衰退をまねいてしまう。海苔の品質を科学的に評価する方法の確立と実践が、日本の海苔産業の維持と発展ための喫緊の必須課題である。