2021年度公募 seeds-2276 - 【九州・沖縄】 養薬剤抵抗性を生じない、高電圧インパルスを用いた新たなワクモ殺虫技術の構築
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VISION

ビジョン

養鶏業での課題の1つとなっている薬剤抵抗性を持つワクモ(ダニ)を誘引させ、高効率に殺虫できる装置の実現

これまでに開発した病原性細菌を殺滅するインパルス電圧による滅菌手法を応用し、鶏舎内に寄生するワクモに対して、高電圧インパルスによる殺滅が可能な簡便・安全・安心な新規駆除手法

わが国における採卵養鶏事業は、高度に集約・システム化された生産体制によって「ワクモ」が通年繁殖し、その経済的被害は近年増大しています。その防除方法として殺ダニ剤が使用されてきましたが、発育環境が極めて短いことから近年、薬剤抵抗性を持つワクモが出現し、対策に苦慮しているのが現状です。そこで本研究では、高電圧インパルス印加によるワクモの殺虫メカニズムを解明、その特性を活かしたワクモ誘引型リアクタを開発し、薬剤抵抗性を持つワクモに対し、殺虫効率90%以上の技術を構築することを目的として研究を行っています。

鶏を吸血するダニの1種類である「ワクモ」の脅威

鶏を吸血するダニの1種類である「ワクモ」は養鶏業界に多大な影響を及ぼしています。ワクモに寄生された養鶏場は、産卵率低下や養鶏の貧血・死亡に至るだけでなく、養鶏業従事者の離職の一因にもなっており、養鶏業界にとって大きな脅威です。
ワクモは約90年前に国内での発生が報告されて以来、9か月程度の寿命を持つこと、卵から成虫(成ダニ)になる期間が7日と極めて短いことなど、その特徴的な生態から全国へと爆発的に拡大し、寄生状況は養鶏場の85%以上と大幅に増加している状況にあります。
これらの対策には、厚生労働省や日本養鶏業界による指針によってピレスロイド系の薬剤散布による殺虫が第一選択として行われており、大きな効果を挙げてきました。しかしながら、近年、薬剤抵抗性をもつワクモが発生し、その殺虫率が30%以下と大きく減少しているのが現状です。

USE CASE

最終用途例

高電圧インパルス印加によるワクモの電撃殺虫

USE CASE 01薬剤以外の新たなワクモ殺虫法が求められる背景を踏まえ、ゲージに敷設可能な高電圧インパルス発生装置の実現

APPLICATION

APPLICATION

電極間にワクモを入れ込み、高電圧インパルスを加えることで殺虫を実現

これまでにワクモ殺虫技術の構築によって、高電圧インパルス印加によるワクモの電撃殺虫を試みています。その全体イメージは、リアクタ電極と電源が一体となった装置を鶏舎内に設置し、リアクタ内に侵入するワクモに対して高電圧インパルスを印加することで殺虫を実現する構想です。

STRENGTHS

強み

「高効率殺虫を実現する電気的パラメータ」を導出し、「誘引型リアクタ」と組み合わせることで、殺虫剤と同程度の高効率殺虫を可能とするワクモ電撃殺虫装置の実現

STRENGTHS 01

殺虫メカニズム解明と新たな形状のリアクタ開発

未だよく判っていない殺虫メカニズムを解明し、殺虫に最適な電気的パラメータ導出、マイクローオーダの微細加工技術で開発したリアクタを組み込み、ワクモへの高電圧インパルスを印加します。その殺虫効率は、ピレスロイド系薬剤と同程度である90%以上の高効率を実現します。

TECHNOLOGY

テクノロジー

高電圧インパルス殺虫のシステム化の実現による、薬剤抵抗性を生じない新たな殺虫技術

TECHNOLOGY 01

殺虫メカニズム解明と新たな形状のリアクタ開発

現在実用化され、最も普及しているピレスロイド系殺虫剤は、その散布コストが低く速効性があるものの、近年では薬剤に対して抵抗性を持つものが増加・蔓延し、その効果の減少が多数報告されています.また、その他駆除の市販製品としては、ダニ類の集積装置による回収が主体であり、駆除技術でないのが現状です。
本技術は、上記のような新規性に加え、物理的に鶏ダニ類を殺滅するという物理的殺滅アイデアに依拠しており、直流高電圧よりも安全性の高い高電圧パルス発生装置の開発そのものが進歩性を有し、汎用性のある部品で構成されていることも特徴です。

PRESENTATION

共同研究仮説

畜産農業分野へ一助となる、複合領域分野を切り開いていきませんか

共同研究仮説01

殺虫や殺菌を電気的に実現する新たなアプリケーション

インパルス高電圧技術は、プラズマ生成から環境浄化まで幅広く応用されており、今回提案の殺虫だけでなく、殺菌も可能であると考えています。畜産農業の手助けとなる技術を共に開発させていただければ幸いです。

RESEARCHER

研究者

上野 崇寿 大分工業高等専門学校 電気電子工学科
経歴

【経歴】
2009年3月熊本大学大学院 自然科学研究科複合新領域科学専攻年次短縮修了
2008年4月 – 2012年12月大分工業高等専門学校 電気電子工学科 助教
2012年1月 – 2018年3月大分工業高等専門学校 電気電子工学科 講師
2018年4月 – 現在大分工業高等専門学校 電気電子工学科 准教授
【受賞歴】
2010年 3月 電気学会 優秀論文賞
2006年 3月 電気学会 電気学会九州支部長賞

研究者からのメッセージ

高電圧インパルス技術を様々な分野に応用し、世の中に普及させたい!

瞬間的な大電力を得ることが特徴の高電圧インパルス技術を用いて、殺虫・殺菌にかかわらず、他の基盤技術と融合させながら多角的なアプローチを試みたいと考えています。