2021年度公募 seeds-2227 - 【関東】 熱力学状態方程式とAI,人工ニューラルネットワークを組み合わせた新規ハイブリッド物性推算法
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  • その他工学
  • 新素材/高付加価値素材
  • センサ・計測・解析
  • AI活用

研究の成熟度

  1. TRL1

    基本原理・
    現象の確認

    基礎研究

  2. TRL2

    原理・現象の
    定式化

    基礎研究

  3. TRL3

    実験による
    概念実証

    応用研究

  4. TRL4

    実験室での
    技術検証

    応用研究

  5. TRL5

    使用環境に
    応じた技術検証

    実証

  6. TRL6

    実環境での
    技術検証

    実証

  7. TRL7以上

    実環境での
    技術検証

※TRL(TRL(Technology Readiness Level):特定技術の成熟度を表す指標で、異なったタイプの技術の成熟度を比較することができる定量尺度

VISIONビジョン

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VISION

ビジョン

「化学工学物性がないから」はさようなら,熱力学状態方程式とAIにより気軽に推算,プロセス設計・開発に役立てたい

化合物の分子構造からAIによる熱力学状態方程式パラメータの予測

化学プロセス設計・開発には密度や蒸気圧など多種多様な物性推算が必要不可欠です.しかしながら,物性測定は専門的な装置・技術を必要とし,その測定には長時間を要します.そのため,日々の研究開発の成果で生み出される化学物質に対して物性データは不足しているのが現状です.化学工学物性を予測する方法も培われてきました.熱力学状態方程式は多様な物性の推算を可能にする強力な理論式です.推算には状態方程式のパラメータが必要とされます.未知の物質に対してはグループ寄与法といった方法で推算する方法が報告されてきました.しかしながら,開発されていく化学物質の分子構造の複雑化など,予測できる適用範囲が追いついていません.既存の方法では1つの物質が持つ複数の官能基が相互しあった結果など,複雑化したパターンの表現をすることができません.複雑化したパターンの表現を得意とするのが人工知能(AI),中でも人工ニューラルネットワークである.化合物の分子構造を入力変数,熱力学状態方程式のパラメータを目的変数とした人工ニューラルネットワークを開発することで,新規開発されていく化学物質の多種多様な物性推算を実現します.

熱力学状態方程式にAIを導入することにより多種のモデルに対応することのできる推算法の確立

熱力学状態方程式は実際のプロセスシミュレーターに組み込まれており,化学プロセス設計・開発に直結した物性推算方法です.状態方程式にはvan der Waals型や格子流体型,摂動理論型があり,その型それぞれに複数種の状態方程式が存在しています.それぞれの状態方程式で得意,不得意としている物性,物質種が存在しています.更に,混合物の推算を行うためには,混合則と呼ばれる混合物を状態方程式により計算するために用いられる純成分パラメータの統合モデルが存在します.この混合則は対象としている混合物の混合モデルに合わせて適切なものを選択しなくてはいけません.残念ながら,すべての物質,物性,混合物に対応可能な状態方程式はなく,多岐にわたり,細分化されてしまっています.混合物に絞ってもその混合モデルパターンが複雑化してしまっていることが原因です.同様に,この問題に対してAI,人工ニューラルネットワークは有効な解決手段です.そこで,混合則の代わりに,人工ニューラルネットワークを状態方程式に組み込むことにより,どのような混合パターンにも対応した物性推算法の確立を実現します.

USE CASE

最終用途例

化学プロセス設計・開発に必要不可欠な化学工学物性を必要最低限の情報で高精度に推算

USE CASE 01新規開発した化合物の分子構造から化学工学物性予測

APPLICATION

APPLICATION

分子構造さえわかれば熱力学状態方程式により様々な化学工学物性の予測が可能に

新規開発した化学物質,当然,その物質に関する化学工学物性のデータはまだ誰も持っていません.分子構造による熱力学状態方程式のパラメータ予測システムにより密度,蒸気圧といった様々な物性予測が可能となります.

USE CASE 02ひとつの物性にとどまらず多種の化学工学物性による分子設計

APPLICATION

APPLICATION

予測システムを逆に用いれば多種の物性から新規化学物質の分子設計

化学物質の分子構造から熱力学状態方程式パラメータを予測できることを逆に用いれば、多種の物性から新規化学物質の分子設計に役立てることができます。

USE CASE 03使用する熱力学状態方程式の統一化

APPLICATION

APPLICATION

最適なモデルに検討することが不用に

現在,物性の推算方法は対象とする物質・混合物に合わせるため,多種多様、細分化がされてしまっています.AIを組み込んだ熱力学状態方程式を開発することですべての物質・混合物に対応し,推算法の統一化が期待されます.

STRENGTHS

強み

“AIの導入”→今まで網羅できなかった物質・混合物に対応
“状態方程式の利用”→一種だけでない、多種多様な物性推算

STRENGTHS 01

AIだからこそ可能とする適用範囲の拡大

パラメータ推算は今までも既往の研究として行われてきましたが,どうしても分子構造に複数の官能基を持つなど複雑化したものに対応できませんでした.AIは複雑なパターンの識別を得意としており,適用範囲の拡大が期待されます.

STRENGTHS 02

熱力学状態方程式だからこそ可能とする多種多様な物性推算

化学工学物性にはそれぞれその推算法が存在し,それぞれに計算を行うための固有のパラメータを必要とします.対して,熱力学状態方程式は密度だけなでなく,多種多様な物性推算が可能であり,その適用温度・圧力範囲も広いです.実際,プロセスシミュレーターにも組み込まれており,プロセス設計に直結しています.

TECHNOLOGY

テクノロジー

化学工学物性測定・熱力学状態方程式・AI学習:3方向による盤石な基盤

TECHNOLOGY 01

化学工学物性を実際に測定し、独自の物性データベース

密度や蒸気圧、相平衡などの化学工学物性を測定する独自の装置があり,測定実績があります.必要とする物性データを実際に実測し,AI学習に必要なデータベースを強化することが可能です.

TECHNOLOGY 02

熱力学状態方程式による多種の化学工学物性推算プログラム

密度,相平衡など多種の物性を熱力学状態方程式による独自の推算プログラムを作成し,計算実績があります.熱力学状態方程式は「Peng-Robinson状態方程式」といった一種にとどまらず,「Sanchez-Lacombe状態方程式」,「PC-SAFT状態方程式」と多岐に渡っています.

PRESENTATION

共同研究仮説

化学工学物性が必要.しかし,データはない,測定も簡単にはできない,推算法も細分化されていてどうすれば良いかわからない.

共同研究仮説01

分子構造さえわかれば良い,AIにより物性推算に必要なパラメータを獲得

化学物質の分子構造を説明変数とし,熱力学状態方程式の計算に必要なパラメータを目的変数とした人工ニューラルネットワークを構築します.結果的に,熱力学状態方程式により密度や蒸気圧といった様々な物性を推算することができるようになります.

共同研究仮説02

これを使えば間違いなし,AIが組み込まれた熱力学状態方程式

物質の種類,混合物の混合状態など,対象に対して最適な推算方法について検討しなくてはいけないのが現状です.熱力学状態方程式の計算方法にAIを組み込むことであらゆるパターンに対応できる推算方法の確立を目指します.

まずは気軽に,化学工学物性獲得のハードルを下げる

基礎的情報でありながら,ハードルが高い化学工学物性の獲得をもっと気軽にできるようになればと考えています.AIによる予測を行うだけでなく,実際に密度や蒸気圧,相平衡を測定することが可能です.

RESEARCHER

研究者

松川 博亮 東京理科大学工学部工業化学科
経歴

2018年 東京理科大学総合化学研究科総合化学専攻 博士課程修了
2018年4月~2023年3月 東京理科大学工学部工業化学科 助教
2023年4月~現在 東京理科大学工学部工業化学科 特別講師

  • 専門領域
    • 化学工学物性の測定
    • 物性推算
    • 機械学習

研究者からのメッセージ

熱力学状態方程式と人工知能(AI)とのハイブリッド物性推算法を開発し,化学プロセス設計・開発を支える

測定法,推算法,多岐に渡ってしまっていて,どうすれば良いかわからない化学工学物性.AIと組み合わせることにより,その悩みを解決します.相平衡など物性を実際に測定することも可能です.化学プロセス設計・開発の基盤を支える一助になれば幸いです.

メールアドレス:hmatsukawa@ci.tus.ac.jp