2021年度公募 seeds-2078 - 【関東】 GaN-HEMTデバイスの高周波駆動による超小型系統連系インバータの開発
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VISION

ビジョン

いつでもどこでも接続可能なフレキシブル電力ネットワークを実現し
次世代エネルギーデバイスによるレジリエントな社会を実現したい

フレキシブルな交流電力システムによるレジリエントな社会の実現

安心・安全な社会の実現のため,電気エネルギーの安定的な確保というのは重要です。近年,需要家サイドに設置される太陽光発電や,エネルギー貯蔵能力のあるEVの普及が進み,災害時に広域の電力系統に頼らないエネルギー供給が可能な環境が整ってきました。それら直流のデバイスを従来の機器で使用する,または複数をネットワーク化して利用しやすくするためには,電力を制御する電力変換器(=インバータ)が必要です。しかしこれまでのインバータではすでに従来型電源によって確立した電力系統に連系することしかできませんでした。災害時や移動先のような独立したネットワークにおいてこのようなエネルギーデバイスを利用するためには,自律的に連系ができる「プラグ・アンド・プレイ」が可能な電力ネットワークおよびインバータが必要です。そこで各エネルギーデバイス単位で最も標準的な電力ネットワークの規格ともいえる交流に変換すれば,高度なエンジニアリングを必要とせずに手軽に様々なエネルギーデバイスを利用することが可能になります。このことは,さらなる再生可能エネルギー利用につながるほか,レジリエントなエネルギーインフラの実現を後押しし,現代の社会的な要請に応えることができます。

次世代パワーデバイスGaN-HEMTを採用し存在を意識しないほどの超小型系統連系インバータを実現

そのようなフレキシブルなシステムを実現するためには,比較的小容量の単位でインバータを持つことになり,魅力的なシステムを実現するにはインバータには設置場所を選ばない小型化が求められます。系統連系インバータはモータドライブ用インバータと違い,インダクタとキャパシタからなるフィルタを持ち,それが全体の体積に占める割合は比較的大きいです。そのフィルタを小型化するためには,スイッチング周波数の高周波化が有効です。特に近年では,SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などによる次世代半導体デバイスの開発が内外で進んでいます。小容量応用では,GaN-HEMTの製品への適用が進んでおり,ACアダプタの小型化や大出力化(=高速充電)に貢献し,モバイル機器の利用に関し生活様式への影響を与えはじめています。同様の方法で太陽光発電やEVからの電力供給に用いる系統連系インバータを超小型化するためには,なおいくつかの課題があります。本研究開発では,GaN-HEMT を1 MHzを超える周波数で駆動することでフィルタの大幅な小型化を実現し,高い効率を維持したままで超小型系統連系インバータを実現するための制御技術,設計技術を開発します。

USE CASE

最終用途例

エネルギーデバイスを電力系統へ接続する電力変換器を
次世代デバイスとその使いこなしにより高性能化します!

USE CASE 01太陽光発電向けマイクロインバータ

APPLICATION

APPLICATION

パネル1枚ごとに設置するマイクロインバータの小型化・高効率化に寄与できます。

パネルの設置方向や種類がそろっていなくても常にパネルごとの最大効率で発電が可能であるマイクロインバータ。モジュール化による大量生産,およびフレキシビリティ向上による施工の容易さ,それによる費用低減により北米では普及が進んでいます。将来普及が期待される薄膜フレキシブル太陽光パネルにおいても重要な技術です。

USE CASE 02V2Gに対応する車載充電器

APPLICATION

APPLICATION

系統への電力供給(V2G:Vehicle to Grid)を可能とする車載充電器の小型化・高効率化に寄与できます。

大容量のバッテリーを持つEVは小容量の車載充電器を持っていますが,充電だけではなく交流系統に電力を供給できる能力を持てば,災害時や移動先での電気エネルギーの確保が可能になります。EV普及後の社会で重要なエネルギーデバイスであり,その高性能化はEV開発における重要なアイテムの一つです。

STRENGTHS

強み

パワーデバイス研究とシステム・制御技術の連携体制

STRENGTHS 01

デバイス~システムまで「パワーエレクトロニクス」に特化した研究体制により様々な課題に対応できます。

半導体工学や電気機器学など学問領域ごとに分かれた研究グループ構成である国内の他の研究グループとは違い,最初から「パワーエレクトロニクス」を対象として設立された目的志向型研究グループで研究開発に取り組みます。

TECHNOLOGY

テクノロジー

次世代半導体パワーデバイスの使いこなしによる
受動部品(インダクタ・コンデンサ)の大幅な小型化を実現

TECHNOLOGY 01

従来デバイス・制御方法では実現が難しい1 MHz超のスイッチング周波数を実現

系統連系インバータにおいて高周波スイッチングを行いフィルタのインダクタを小型化するためには単にデバイスの高速駆動をすればいいだけではありません。本研究グループが開発した手法により,1 MHz以上のスイッチング周波数を用いて小型化したフィルタであっても,極めて歪みの少ない正弦波電流を出力することが可能です。

TECHNOLOGY 02

単相インバータに必要な大容量コンデンサを不要化

小容量インバータで主流の単相インバータでは,商用電力周波数の2倍で脈動する電力を平滑化するためのコンデンサが必要であり,インバータの小型化の障害になります。本研究ではインバータ同様にGaN-HEMTを用い小型化高効率化された電力変換器により,脈動電力を制御することでコンデンサの大幅な小型化を実現します。

PRESENTATION

共同研究仮説

再生可能エネルギー大量導入時代に必要なキーコンポーネント

共同研究仮説01

次世代デバイスを用いて魅力ある製品を開発していただけるパートナーを探しています。

今後多様な環境に設置されていくであろう太陽光発電やV2Gによるエネルギー蓄積など,再生可能エネルギー大量導入時代には電力変換技術はキーコンポーネントとなります。それを,ユーザーが意識しないくらい小さく実現することができる技術によって,これまでにない価値をもった製品・サービスを開発しませんか。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

磯部 高範 筑波大学 数理物質系
経歴

2003年3月 東京工業大学工学部電子物理工学科卒業。

2005年3月 東京工業大学理工学研究科原子核工学専攻修士課程修了。

2008年3月 東京工業大学総合理工学研究科創造エネルギー専攻博士課程修了。

2008年4月から2010年3月まで同大学統合研究院ソリューション研究員。

2010年4月から2012年3月まで同大学原子炉工学研究所特任助教。

2013年10月より現職。

【研究室Webサイト】 http://power.bk.tsukuba.ac.jp/