2021年度公募 seeds-2008 - 【四国】 低エネルギーな長波長光を励起光源とする超高感度蛍光顕微鏡システムの開発
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VISION

ビジョン

より高コントラストな画像を与える蛍光顕微鏡技術を確立したい

「色素系」と「光学系」を最適化して低ノイズ・高輝度な蛍光顕微鏡システムを構築

試料を染色した色素からの発光を検出・観察する蛍光顕微鏡技術は、発光検出の高感度性や染色部位の選択性による環境識別などの観点から化学や生命科学、医学分野を中心に広く用いられています。当該技術においては光子エネルギーの大きな紫外~青色光が励起光として広く用いられていますが、これらの光は発光性色素のほかに細胞などの生体試料を構成する物質や顕微鏡の光学部品をも励起して発光を与えてしまうことがあります。このような現象は「自家蛍光」と呼ばれ、得られた顕微鏡画像のノイズとなって解像度を低下させる原因となります。また、紫外~青色光は生体透過性が低く、試料内部に励起光が到達しないため、内部の情報を得ることができないという課題も残されています。
本研究ではこれらの課題を一挙に解決するために、複数個の低エネルギーな光子を利用して高エネルギーな励起状態を生み出す「フォトンアップコンバージョン現象」を利用して低ノイズ・高輝度な画像を与える蛍光顕微鏡システムを、「色素システム」と「光学システム」の両面から開発します。

微小球状イオン交換媒体を利用して純水中でも希釈条件でも機能する「色素系」を構築

本研究では、2分子の励起三重項状態から励起一重項状態と基底状態を1分子ずつ生成する「三重項-三重項消滅」を用いたアップコンバージョン蛍光システムを構築します。この機構では、複数種の色素を介した多段階の反応を経ることから、多様な環境が混在する観察対象に導入しても機能する系の設計が不可欠です。また、生体試料を染色するにあたっては、純水中あるいは水溶液で機能することが重要となります。しかしながら、有機蛍光化合物や光増感剤の溶解度や分散性から、水系溶媒中での達成例はごく限られています。
本研究では、微小球状イオン交換媒体の内部にこれらの色素群を濃縮・担持することでこれらの課題を解決します。色素を濃縮する場として水への高い分散性をもつ微粒子を用いることにより、純水中でも希釈条件でもアップコンバージョン蛍光を示す「色素システム」を創出します。

USE CASE

最終用途例

低エネルギーな長波長光の高エネルギーな短波長光への変換は
様々な分野で注目

USE CASE 01生命現象の検出・追跡

APPLICATION

APPLICATION

高コントラストな蛍光画像を高速・高感度に獲得

自家蛍光の少ない低ノイズ・高輝度な蛍光顕微鏡システムを利用することによって、生体試料の様子を高速かつ高感度に検出・追跡できるようになり、生命現象の理解・解明に寄与できると期待されます。

USE CASE 02長波長光を利用する光-エネルギー変換

APPLICATION

APPLICATION

フォトンアップコンバージョン現象を利用して長波長光を有効利用

低エネルギーな長波長光を高エネルギーな短波長光に変換する技術の利用により、太陽光に多く含まれる長波長光を有効利用できるようになると期待されます。

STRENGTHS

強み

「色素系」と「光学系」の最適化による高コントラストな蛍光顕微鏡システム

STRENGTHS 01

金属錯体と蛍光色素の組み合わせを最適化してより強い発光を

より高輝度なアップコンバージョン蛍光を発するシステムの構築には、金属錯体と蛍光色素の種類や量の組み合わせを網羅的に探索する必要があります。これらの化学種に対する合成技術と微小球導入過程の柔軟性を駆使してより強く輝く色素システムを構築します。

STRENGTHS 02

光学系の最適化によってより高速・高感度な検出を

一般的な蛍光顕微鏡では短波長光を励起光として長波長光の放出を観測しています。長波長光を励起光、短波長光を観測光とするアップコンバージョン蛍光の観測に特化した光学系・検出系を構築することによってより高感度な検出を目指します。

TECHNOLOGY

テクノロジー

「色素系」の柔軟性と最適化された「光学系」をもつ蛍光顕微鏡技術

TECHNOLOGY 01

色素の担持は混ぜるだけ、種類や量を細やかに調整できます

微小球状イオン交換媒体への色素化合物の導入は、両者を混ぜるだけで速やかに進行します。色素の種類や担持量を細やかに制御することで観察対象にあわせた色素システムを調製することが可能です。

TECHNOLOGY 02

アップコンバージョン検出に特化した蛍光顕微鏡技術

長波長光を励起光、短波長光を観測光とするアップコンバージョン蛍光の観測に特化した光学系・検出系を構築することによってより高感度な検出を目指します。

PRESENTATION

共同研究仮説

さらに高度化・一般化したフォトンアップコンバージョン技術を
共に生み出していきませんか

共同研究仮説01

色素系のパッケージ化

ニーズに合わせた機能をもつ色素システムの構築とそれらの安定性・生体毒性の評価・向上を行うことで、誰でも簡便に使用できる色素システムをパッケージ化したいと考えています。

共同研究仮説02

アップコンバージョン用光学系の最適化・モジュール化

アップコンバージョン蛍光の検出に特化した光学系・検出系をさらに高度化することにより、高感度化・小型化したモジュールの開発に取り組みたいと考えています。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

伊藤亮孝 高知工科大学 大学院工学研究科/環境理工学群
経歴

2010年10月 北海道大学 大学院理学研究院化学部門 博士研究員

2011年6月 米国ノースカロライナ大学チャペルヒル校化学科 Postdoctoral Research Associate

2013年4月 大阪市立大学 大学院理学研究科物質分子系専攻 助教

2016年4月 高知工科大学 大学院工学研究科/環境理工学群 講師

2022年4月 高知工科大学 大学院工学研究科/環境理工学群 准教授

【受賞歴】

2009年4月 日本化学会第89春季年会 学生講演賞

2015年4月 日本化学会第95春季年会 優秀講演賞(学術)

2021年11月 令和3年度有機合成化学協会中国四国支部奨励賞

【個人ページ】

http://www.scsci.kochi-tech.ac.jp/akito/

研究者からのメッセージ

光化学・光物理を駆使した新たな光化学アプリケーションを創出したい

我々の研究室では、有機化学・金属錯体化学・高分子化学をベースにした化合物合成と光化学・光物理を駆使した機能解明に取り組み、様々な光機能性材料を創出しています。これらの材料・技術を利用する新たな光化学アプリケーションの開発に一緒に取り組んでいくことができると幸いです。