環境調和的な芳香族化合物のバルクケミカル合成プロセスを提案
芳香族化合物は液晶、香料、機能性高分子、染料、医農薬品、繊維、有機ELなど幅広い分野で我々の社会を支え、身の回りの至る所に存在するきわめて重要な化合物群です。芳香族化合物合成の大量合成では (バルクケミカル合成)、ベンゼンとプロピレンと酸素からフェノールとアセトンを合成するクメン法や、アンモニアを硝酸に変換し硫酸との混酸によりベンゼンをニトロ化した後水素還元してアニリンを合成する手法などが有名ですが、化学工業的に高効率に設計されているものの、多段階合成・多量の試薬・高温/高圧等を必要とするエネルギー多消費型プロセスとなっています。化学反応として本質的に環境負荷が大きいことが原因であるため、環境にやさしい新反応経路を開発して置き換える必要があります。そこで、本研究では、脱水素芳香環形成反応というシクロヘキサノンやシクロヘキサノールといった非芳香族化合物から芳香族化合物を合成する新反応に着目しました。例えば、アンモニアとシクロヘキサノールを基質としたアクセプターレス脱水素芳香環形成反応による選択的な第一級アニリン合成が実現できれば、すでに工業化されているプロセスと組み合わせることで、形式的にベンゼンとアンモニアからアニリンと水素を合成する理想的なプロセスになります。