今さら流体制御?
流体によるエネルギーロスや騒音の発生は大きな課題としてとらえられ、様々な観点から長く研究が行われてきました。しかし、長い歴史を持つがゆえ、その研究成果は限界を迎えつつあり、大きな効果を得る手法の提案は難しくなっています。そこで本研究で目を付けたのが、物体表面の音響透過損失の制御による流体の制御です。
エネルギーロスや騒音の発生を低減するための流体の制御と言えば、境界層や渦の制御がパッと浮かぶ方もいらっしゃると思います。確かに、例えば物体表面から空気流を吹き出すことや、物体の形状を工夫することで、これまで多くの、有益な流体制御効果を得てきました。しかし、先述の通り、最適化技術やAI/機械学習技術の進歩もあり、例えば物体形状の工夫や最適化によるエネルギーロスや騒音の発生の低減は限界を迎えています。
このような背景から、これまで当たり前であったことを当たり前としない、既成概念を捨てる考えにたどり着きました。それが、物体表面の音響透過性の制御です。音響透過性の制御とは、すなわち圧力波の通りやすさを意味します。物体の表面では基本的には圧力波を全反射するものとして議論しますが、表面の素材を変え、音響透過性を高めることで、従来の流体に関する運動方程式を変え、流体を制御し、今までと異なる制御効果を得ます。