2021年度公募 seeds-1749 - 【九州】 天然由来の細胞構造を利用したスポンジ木材の開発 
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研究の成熟度

  1. TRL1

    基本原理・
    現象の確認

    基礎研究

  2. TRL2

    原理・現象の
    定式化

    基礎研究

  3. TRL3

    実験による
    概念実証

    応用研究

  4. TRL4

    実験室での
    技術検証

    応用研究

  5. TRL5

    使用環境に
    応じた技術検証

    実証

  6. TRL6

    実環境での
    技術検証

    実証

  7. TRL7以上

    実環境での
    技術検証

※TRL(TRL(Technology Readiness Level):特定技術の成熟度を表す指標で、異なったタイプの技術の成熟度を比較することができる定量尺度

VISIONビジョン

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VISION

ビジョン

建築材や家具材だけではなく、スポンジやゴムなどの柔らかい素材にも、木目が美しく、サスティナブルな木材利用を。

木材の良さは硬さや強さのみではありません。柔らかい木材も魅力的です。

主に建築材や家具材として利用される木材は、密度の高い樹種や、物理的・化学的処理で高密度化した木質材料など、力学的強度に優れたものが一般に高品質とされています。これらの木材は、世界的な資源の枯渇や生産エネルギーコストが高く、利用が難しくなっています。今回開発した素材は、一般には価値が低いとされる低密度材を使って、非常に簡便な処理で木材をスポンジ状態まで柔らかくすることが可能です。処理条件や使用する樹種によって柔らかさを調整できる可能性があり、幅広い用途が期待できます。

見た目も素材も木材だが、触るとスポンジのように柔らかい木材

私は木材の美しい木目や触感、ハンドメイドできる加工性に魅了され研究を行っています。従来の木材の軟化技術は木材が白色化したり、粉砕等の加工が必要でしたが、本技術は見た目を維持したまま柔らかくすることが可能です。木材の良さをできる限り維持し、石油系由来のスポンジやゴム材に代替できるスポンジ状態の木材を使用した製品の実用化を目指しています。

USE CASE

最終用途例

スポンジ木材は建築、家具分野だけではなく、樹脂やゴム等、柔らかい素材が使われる幅広い分野で利用可能

USE CASE 01木目が美しいクッション木材

APPLICATION

APPLICATION

危険な場所にはスポンジ木材を使って衝突による怪我を防止

カーペットやクロスなどの柔らかい素材を貼らなくても壁や床などにそのまま木材が使えます。また、衝突の危険性がある柱や梁に部分的に貼り付けることで、木材の見た目を損なわずクッション材としても使えます。

USE CASE 02曲げても、動いても使えるスポンジ木材

APPLICATION

APPLICATION

柔らかい木材なので、湾曲面や複雑な形状、動く部位でも使えます。

直面には無処理の木材を、湾曲部にはスポンジ木材を使って、木材の意匠性を最大限に発揮した製品が作れます。また、動きが求められる部位等にも木材を使う事ができます。

USE CASE 03好きな大きさで使えます。

APPLICATION

APPLICATION

大きな部材から小さな部材まで自分で自由に加工できます。

木材や板材、木粉など様々な大きさの木材をスポンジ化できますし、スポンジ木材同士を貼り合わせたり、ナイフで簡単に切れますので、好きな大きさに加工して利用できます。

STRENGTHS

強み

低コストかつ簡便な処理で開発が可能

STRENGTHS 01

グリーンケミストリーとされるイオン液体を再利用

本研究で行うスポンジ化処理はイオン液体を使っています。イオン液体とは、難揮発性・熱安定性に優れた性質を持っているため、再利用可能な環境負荷の小さいグリーンケミストリーとして知られています。この性質を利用し、コスト削減が期待できます。

STRENGTHS 02

薬液注入と乾燥工程のみの簡便な処理

スポンジ木材は薬液を注入し、加熱するのみのとても簡単な工程で生産が可能です。従って、温度100℃程度で加熱できる装置があればどこでも簡単に処理することができます。温度を変化させるのみで柔らかさも調整することができます。

TECHNOLOGY

テクノロジー

みんなに優しいスポンジ木材

TECHNOLOGY 01

自然が造る細胞構造でスポンジ化

細胞の強度が最も弱い部分をイオン液体でわずかに軟化させ、細胞の多孔質構造を維持したままスポンジ化することに成功しました。樹木が作った細胞構造をそのまま維持した天然のスポンジ素材です。

TECHNOLOGY 02

安全な薬剤で簡単に製造

本研究で使用する薬剤は、酸やアルカリ等の危険な薬剤を使わず、熱にも安定したイオン液体を使用しています。水に薄めたイオン液体を木材に含浸させて、加熱処理するのみでスポンジ木材を製造可能です。

PRESENTATION

共同研究仮説

環境にやさしいスポンジ木材を使って新しい製品を開発しましょう。

共同研究仮説01

用途が限られる低密度な木材を有効活用しませんか?

スポンジ木材に適した樹種は建築材や家具材での利用が難しい低密度な木材です。日本には沢山のスギが植わっていますが、低密度なため使われないスギ材が多くあります。そのような木材でも利用可能なスポンジ木材で製品を作りましょう。

共同研究仮説02

木材では不向きな製品にもスポンジ木材が使えます。

環境問題が深刻化し、木材の利用が大変注目されています。硬い素材から柔らかい素材まで、木材を幅広く使える時代になりました。木材利用の発想が生まれなかった製品にもきっと利用出来ると考えています。スポンジ木材を利用するアイディアをお待ちしております。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

阪上宏樹 岩手大学農学部地域環境科学科森林科学コース 准教授
経歴

2004-2006年 住宅関連企業に勤務
2006-2009年 九州大学大学院 生物資源科学府 博士(後期)課程
2009-2010年 九州大学大学院 農学研究院 学術研究員
2010年 森林総合研究所 非常勤特別研究員
2011年1月〜2024年9月 九州大学大学院農学研究院 助教
2024年10月〜現在 岩手大学農学部

研究者からのメッセージ

サスティナブルで環境に優しく、見た目も美しい木材に、あっと驚く新機能を付与した新素材を開発しましょう。

木材は自然環境が育てた樹木から得られる唯一無二の生物材料です。建築、土木、家具材として工業利用されるのみならず、個人レベルで楽しめる身近なDIY材料でもあり、見た目や触感から伝わる暖かさが魅力の一つです。この魅力ある木材を語りながらあっと驚く新技術が凝集された新しい木材を一緒に開発しましょう。