2021年度公募 seeds-1731 - 【近畿】 キラル結晶性マテリアルの晶析によるデラセミ化の連続化システムの開発
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VISION

ビジョン

「連続合成に対応できる連続デラセミ化晶析」と「コングロメレートの高速スクリーニング法」を実現したい

バッチ型晶析に基づいたデラセミ化の連続化によりあらゆるキラル化合物の製造を効率化する

本研究開発は、晶析による光学分割法「デラセミ化」を連続化するための技術開発を行い、キラルな化学品製造における生産効率の向上に貢献します。デラセミ化はエナンチオマーをラセミ化条件下で結晶化させることにより、不要な異性体を所望の異性体へと変換しつつ結晶として得る光学分割手法です。不要な異性体が生じないため、非常に有望な技術ではありますが、バッチ型晶析では時間のかかるプロセスであることが実用化への課題となっております。

近年、有機合成化学の分野ではフローケミストリーの台頭によって、連続プロセスによる合成技術が進歩しており、化学品の製造効率の向上が見込まれます。実用化に向けて、これに対応できる精製プロセスが求められており、トラブルが多い晶析の連続プロセス化は非常に重要な課題です。特にキラル化合物は高付加価値な化合物が多く、晶析による光学分割を連続プロセスとすることができれば、大きな利益につなげることができます。

本研究開発では、結晶化槽に原料を連続的に供給しつつ、結晶を取り出すアプローチにより、効率的な「デラセミ化の連続プロセス化」の開発に挑戦します。キラル化合物を扱う医薬品業界や、キラルな構造体をつかった材料開発の基盤技術としての応用が期待できます。

第二次高調波発生を利用してコングロメレート結晶の高速スクリーニング法を開発する

デラセミ化の適用に必要条件となるコングロメート結晶を、レーザー光を用いて検出するシステムを開発します。デラセミ化による光学分割は、不要なエナンチオマーも所望のエナンチオマーとして得ることができるため、従来の優先晶出法と比較して、2倍以上の生産効率を実現できる有望な現象です。しかし、デラセミ化を適用するには、化合物が、一方のエナンチオマーのみから成る結晶、いわゆる「コングロメレート」を与えることが必要条件です。ケンブリッジ結晶構造データベースによると、キラルな有機化合物を結晶化させた場合、このコングロメレート結晶を形成するものはおおよそ5-10%程度です。すなわち、キラル化合物のラセミ体を合成しても、その化合物がコングロメレートを形成する可能性は低いことが課題となっています。
 そこで本研究開発では、対称中心をもたない結晶に光を照射すると、その半分の波長の光を発生する「第二高調波発生(SHG)」に注目して、コングロメレート結晶のスクリーニング技術として応用を目指します。

コングロメレートを形成しない化合物でも、適切なコフォーマーと混合して結晶化することによりコングロメレートを与えることがあります。残念ながら、コングロメレートを与えるコフォーマー探索に有用な指針はなく、網羅的なトライ&エラーが必要です。大学の研究であれば単結晶を作成しX線構造解析を行うことも可能ですが、結晶の解析にはどれだけ早くても数十分かかります。SHGがコングロメレートで観測されることを利用して、これを1秒未満で検出する手法を開発します。

USE CASE

最終用途例

キラル結晶性マテリアルは医薬品や食品産業のみならず材料としても有望視

USE CASE 01デラセミ化の連続晶析化により不要なエナンチオマーが生じない高効率プロセスの実現

APPLICATION

APPLICATION

キラルな医薬品化合物、中間体の製造・精製効率を爆発的に改善する技術革新

デラセミ化はラセミ化条件下における優先晶出法であり、ラセミ体の不要なエナンチオマーを所望のエナンチオマーに変換しつつ結晶化させる技術です。不要なエナンチオマーが生じないため歩留まりのよいプロセスとなります。さらにこれを連続プロセス化することにより、キラル化合物の製造効率が爆発的に飛躍します。

USE CASE 02完全なフローケミストリーに向けたラストピース

APPLICATION

APPLICATION

フロー合成に対応できる連続晶析による光学分割法

フロー合成法の開発が著しく進む一方で、それに対応できる精製手法の開発は遅れをとっています。連続的に供給されるキラルな生成物を、連続的に結晶化させつつ精製することが可能となり、品質の高い結晶性キラルマテリアルの大量製造に適用できます。

USE CASE 03X線結晶構造解析いらずのコングロメレートスクリーニング技術の実現

APPLICATION

APPLICATION

第二次高調波発生を利用してキラルな結晶構造を判別するシステム

結晶構造中に対称心がない結晶に対して光を照射すると、半分の波長の光が発生します。これは「第二次高調波発生(SHG)」と呼ばれる現象です。晶析による光学分割に必要なコングロメレートには対称心がなく、SHGが観測されます。これを利用して共結晶や塩結晶など、複数の構成要素から成る結晶構造のスクリーニング手法を開発します。

STRENGTHS

強み

結晶化学や物理化学の学理に立脚したプロセス化学へのアプローチ

STRENGTHS 01

キラル化合物の相図構築を通じた堅牢性の高いプロセス設計

分子性結晶の熱力学的平衡状態を、相図の構築により正確に取り扱うことを得意としています。複数の結晶相を形成する化合物でも所望の結晶相を再現性良く取り出すことができます。

STRENGTHS 02

分子性結晶に特化したSHG測定システムの設計

SHG顕微鏡が市販されているものの、多くは生体組織の観察を志向してフェムト秒レーザーを搭載したモデルであり非常に高価です。本研究開発では分子性結晶での使用に限った設計を行うため、安価かつ必要な機能をそろえたシステムとなります。

TECHNOLOGY

テクノロジー

連続晶析によるデラセミ化を可能とする技術

TECHNOLOGY 01

キラル化合物のラセミ化条件における相図の構築

キラル化合物の熱力学的平衡は2つの異性体と溶媒からなる複数成分系固液相図となります。有機分子性結晶の相図の構築は、熱分析によって行うことができますが、ラセミ化条件における平衡状態の取り扱いは複雑です。これまでにラセミ化のみならず、複数の結晶形が生じる系において相図の構築に成功しています。

TECHNOLOGY 02

晶析のプロセス研究に基づく堅牢なデラセミ化条件の決定

相図と結晶成長の化学を駆使して、フラスコスケールからパイロットスケールへのスケールアップでもトラブルが起こりにくい晶析条件を決める研究に取り組んできました。適切な撹拌速度や温度制御により結晶形をコントロールし、プラントスケールでの製造も可能とする研究開発に取り組みます。

PRESENTATION

共同研究仮説

キラルマテリアルの連続生産プロセスを完成させたい

共同研究仮説01

デラセミ化による連続光学分割は次世代の基盤技術

キラル化合物はパスツールによる発見以来、科学的興味にとどまらず人間の生活を大きく変化させてきました。今後は医薬品や食品にとどまらず、材料化学にもキラリティが重要になる時代です。新しい技術開発で一緒に次世代産業のトップランナーを目指しましょう。

共同研究仮説02

キラル結晶性マテリアルの新しい分析方法を開拓しましょう

固体レーザーの発展に伴い、非線形現象への注目が集まっていますが、この応用はまだまだ未開拓です。本研究開発は、固体中のキラリティ分析に新しい風を吹き込むことを目指しています。まさにブルーオーシャンとも言えるこの分野で、新しい技術開発と市場の開拓をしませんか。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

桶谷 龍成 国立大学法人大阪大学大学院基礎工学研究科 助教
経歴

2021年2月より大阪大学大学院基礎工学研究科 助教

2020年2月 – 2021年1月 Université Libre de Bruxelles(ベルギー), Marie Skłodowska-Curie Actions COFUND博士研究員

2017年1月 – 2019年12月 Université de Rouen Normandie(フランス), 博士課程

この間

2019年4 – 5月 Merck KGaA(ドイツ), External PhD student

2018年10 – 11月 Radboud University Nijmegen(オランダ), Visiting student

2017年10 – 11月 ETH Zurich(スイス), Academic guest

 

【個人ページ】

http://labusers.net/~oketani/

研究者からのメッセージ

バッチ生産から連続生産へのパラダイムシフトを完遂したい

キラル化合物は医薬品に限らず材料分野でも重要な物質群となります。それらを効率的に生産する技術は長期的な利益につながると期待されます。特に晶析によるデラセミ化は、最近10年間、大学での基礎研究が活発となっていますが、プロセス化についてはまさに黎明期です。フロー合成をはじめとする連続生産技術に対応できるプロセスを開発し、連続生産プロセスの完成を目指します。