ハロゲンは有機化学における万能な「つなぎ目」
有機化学は、世界最小の「ものづくり」に挑む研究分野です。多様な機能持つ素材(機能性分子)を創出するため、精密分子加工を実現する新たな技術の開発が求められてきました。 2010年ノーベル化学賞を受賞したカップリング反応は、こうした市場ニーズにズバリ答える技術だと言えるでしょう。有機分子を自在につなぎ合わせることが可能となり、多くの機能性分子が生み出されてきました。では、その「つなぎ目」を作る技術の進展はどうでしょうか?
塩素(Cl)臭素(Br)ヨウ素(I)といったハロゲン元素を含む分子(ハロゲン化合物)は、あらゆる化学結合に変換できる万能な「つなぎ目」であり、ハロゲン化合物を軸に標的分子の合成ルートを設計することが、現代の有機化学での定石となっています。また合成中間体としての価値のみならず、ハロゲン元素の導入によって有機分子の特性をチューニングできることの利用価値は、市販の医薬品&農薬の約60%がハロゲン元素を含むことからも裏付けられています。本研究の目的は、こうした価値あるハロゲン化合物を効率的に合成するため、世界最強の活性を持つ新触媒を開発することです。