2021年度公募 seeds-1489 - 【関東】 固体王水を利用した難溶解性白金族金属の革新的リサイクル手法の開発
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VISION

ビジョン

もっと穏和に、もっと手軽に。新しいリサイクル法が拓く貴金属の安定供給の道

廃液も少なく、処理温度もずっと低く。処理のハードルや環境負荷を減らしてPGMsの利用に環境調和性を

従来の貴金属、特に白金族金属(PGMs)を処理するプロセスは、高温での乾式処理や強力な酸による湿式処理を必要としていますが、これらは大きな環境負荷を伴います。リサイクルは鉱石からの精錬よりも環境に優しいとは言え、より負荷の小さな手法が必要とされています。さらに、PGMsの中でも特に難溶解性とされるロジウムやイリジウムは、自動車用触媒や半導体用るつぼへの需要がありつつも、精錬やリサイクルの難しさが指摘されています。

本研究で開発する「固体王水」は、塩化鉄を主体とする溶融塩を利用します。従来の乾式法よりも大幅に低い温度で処理でき、また湿式法で必要な強力な酸や塩素ガスは用いません。そのため、処理に必要なエネルギーや処理後の廃棄物処理の負担・環境負荷を大幅に軽減可能です。

「固体王水」は、広く利用されるPGMsである白金やパラジウムに加え、上述のロジウムやイリジウムへも適用可能です。特に後者は処理が難しいことに加え、供給量が極めて少ないことから、リサイクル手法供給の安定化に寄与できます。

元素ごとの性質差を利用して、PGMs同士を高効率に分離・回収。多様なスクラップへも適用可能

白金族金属を含むスクラップには、複数の元素が共存する事例が多くあります。また、合金として利用される事例もあります。一般的なリサイクル手法では、処理で得られたPGMsのイオン・錯体を含有する溶液に対して、各元素に対応した溶媒による溶媒抽出を多段階に分けて実施し、相互に分離・回収していますが、利用された溶媒が大量の廃液として排出されます。一方本手法では、処理後にリーチングして得られた溶媒の酸性度や添加する化合物を適宜変化させることで、元素ごとに順次析出させられるという特長があります。

溶媒抽出では、錯体・イオンを含有する溶媒から別途金属を回収する必要がありますが、本手法では適切なコントロールにより単段で各元素を回収できることから、廃液を抑制し、リードタイムを短縮することが可能です。また、スクラップ中に含有されるPGMsの組成によらず同じ手法を適用できることから、処理フローを単純化でき、効率的に大量のスクラップを処理できます。

USE CASE

最終用途例

PGMsのライフサイクル全体での環境負荷を軽減しうる画期的なリサイクル手法を提供

USE CASE 01難溶解性貴金属の効率的な処理手法の提供

APPLICATION

APPLICATION

あの元素まで!?難溶解性貴金属まで処理できる固体王水

ロジウムやイリジウムは、PGMs中でも特に処理の難しい元素として知られています。「固体王水」ならば、これらも他のPGMsと同じ条件で処理できるため、製品への利用やリサイクルのハードルを下げられます。

USE CASE 02複数の元素が共存するスクラップからの効率的な回収

APPLICATION

APPLICATION

色々なスクラップをよりどりみどり。身近な都市鉱山を効率的に利用できます。

「固体王水」によるスクラップ処理後の適切な回収プロセスの実施により、含有されるPGMs同士を相互に分離・回収できます。スクラップの組成によらない回収手法により、PGMsのライフサイクル全体を通じた環境負荷軽減に貢献します。

STRENGTHS

強み

廃液を抑えつつ、比較的低い温度でも貴金属を処理できる。溶融塩による新しい貴金属のリサイクル手法

STRENGTHS 01

スクラップを溶融塩に浸漬するだけでPGMsが溶解。廃液も出さず、単純な操作で処理できます

一般的には強力な酸や高温の溶融金属が必要なPGMsの処理に対し、400 ℃程度の溶融塩に浸漬するだけで処理が進む「固体王水」は、安全管理や設備にかかる負担を軽減し、リサイクルをより身近なものとします。

STRENGTHS 02

簡単な手法で元素同士を相互に分離・回収。様々なタイプのスクラップにも対応可能です

スクラップ中に含有されるPGMsは、組成も種類も様々です。固体王水で処理後、析出条件のコントロールによる相互の分離・回収が確認されており、溶媒抽出などの従来法よりもプロセスを簡素化・環境負荷を軽減できます。

TECHNOLOGY

テクノロジー

溶融塩の有効活用を通じたPGMsの革新的リサイクルプロセス

TECHNOLOGY 01

溶融塩による直接塩化が可能にする、貴金属の容易な処理

「固体王水」はPGMsを直接塩化でき、従来必要とされていた酸や電解処理を必要としません。設備やプロセスの簡素化を通じてPGMsのリサイクルを容易にすることで、利用や回収のハードルを下げることが出来ます。

PRESENTATION

共同研究仮説

新しいリサイクル手法の実現を通じて、貴金属利用のハードルを下げていきましょう

共同研究仮説01

手軽なリサイクル手法が拓く、難溶解性PGMsの効率的な利用

難溶解性PGMsは先端技術に必須の素材ですが、価格や環境負荷に起因する使いづらさも指摘されています。従来よりも手軽なリサイクル手法の普及を通じて利用のハードルを下げ、より有効な使い方を模索したいと考えています。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

吉村彰大 千葉大学大学院 工学研究院 先進理化学専攻
経歴

東京大学 生産技術研究所 (2016/4 – 2017/3) 岡部研究室 特任研究員

千葉大学 大学院 工学研究院 (2017/3 – 2019/3) 松野研究室 特任助教

千葉大学 大学院 工学研究院 (2019/4 – ) 松野研究室 助教

【受賞】

2021年: 第12回日本LCA学会賞 論文賞

2020年: 2019 年度「貴金属に関わる研究助成金」 萌芽賞

研究者からのメッセージ

ライフサイクル全体を俯瞰したリサイクル手法の開発を通じて、貴金属の効率的な利用を実現

先端技術に欠かせない貴金属には、精錬やリサイクルの環境負荷が大きいという問題があります。「固体王水」の実現を通じてライフサイクル全体の環境負荷を軽減し、貴金属利用のハードルを下げたいと考えています。