2021年度公募 seeds-1375 - 【関東】 酸化ガリウムパワー半導体の実用化を目指した,放熱基板と原子レベルで接合した次世代複合ウェハの開発
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VISION

ビジョン

酸化ガリウム薄膜と放熱基板を貼り合わせた高放熱性パワー半導体ウェハの生産手法を開発

社会の省エネ化を推し進めるため、パワー半導体として「酸化ガリウム」の活用が注目

現在カーボンニュートラルといった高い環境目標の達成のため、電力の制御・変換に半導体デバイスを用いる「パワー半導体」が注目されています。これにより消費電力を効率化できるため社会活用が始まっていて、2020年の2.8兆円の市場規模で、2030年に4.5兆億円になると予測されています(参考:富士経済プレスリリース第21055号)。

技術の発展の中で、右の表のように既存材料のSiよりも高い省エネ効果を持つ新材料の活用が注目されています。特に酸化ガリウムは日本が中心的な役割を果たしながら開発されてきた材料であり、パワー半導体として実用化されれば社会の省エネ化が大きく進むと期待されています。

酸化ガリウムの課題である放熱効率の低さの解決のため、熱伝導率の高い材料と複合化したウェハを開発

ただ酸化ガリウムの課題として、熱の伝やすさを示す「熱伝導率(W/m/K)」が非常に小さく、発熱量が大きいパワー半導体に応用すると熱暴走するという課題があります。本開発では酸化ガリウムのパワー半導体への応用を進めるため、酸化ガリウムからの放熱効率の向上を目的とします。具体的には酸化ガリウムを熱伝導率の高い放熱基板と原子レベルで結合させ、さらに熱を伝えにくい酸化ガリウム部を極薄化する技術を開発します。これによりデバイスの温度上昇に比例する「熱抵抗(K/W)」を右の図のように90%以上に低下できれば、高出力化が可能かつ省エネ効果の大きな次世代パワー半導体を実現できます。

USE CASE

最終用途例

省エネ社会の実現に不可欠な「高出力・高周波数電力の低損失制御が可能なパワー半導体」が期待

USE CASE 01放熱効率の高い酸化ガリウムウェハの生産へ

APPLICATION

APPLICATION

酸化ガリウムの課題である放熱効率の低さを改善し、酸化ガリウムパワー半導体の実用化を促進

本計画にて放熱効率の高い酸化ガリウムウェハの生産が可能になると期待できます。これにより酸化ガリウムの課題である放熱効率の低さが克服され、酸化ガリウムパワー半導体の実用化が大きく進むと期待されます。

USE CASE 02酸化ガリウムパワー半導体による高出力・高周波制御へ

APPLICATION

APPLICATION

高出力・高周波数電力を効率的に制御・変換できる高酸化ガリウムパワー半導体が可能に。

現状のパワー半導体では制御できない高出力・高周波数の電力は進行波菅などが使用されますが、高放熱型の酸化ガリウムパワー半導体により制御可能な出力・周波数が向上すると、小型軽量な半導体チップにて効率的な電力制御が可能になります。

STRENGTHS

強み

熱伝導率の高いSiCおよびダイヤモンドの放熱基板が直接接合した革新的放熱構造の実現

STRENGTHS 01

放熱基板として高い熱伝導率を有するSiCおよびダイヤモンドを活用

放熱基板に高い熱伝導率をもつ炭化ケイ素(SiC)およびダイヤモンド基板を活用することで高い放熱効果が得られます。SiCは放熱材料として一般的な銅(Cu)やアルミニウム(Al)よりも高い熱伝導率を有し、また大型ウェハの商用化も進んでおります。またダイヤモンドは桁違いに高い固体中最大の熱伝導率を有するため、複合化することでパワー半導体の出力・周波数を大幅に向上させることができます。

STRENGTHS 02

酸化ガリウムと放熱基板が原子レベルで接合された理想的な放熱構造を作製

酸化ガリウムと放熱基板の複合化にはんだ等の接合材を用いると、界面にて伝熱を妨げてしまいます。今回、私たちが開発してきた材料の表面同士を原子レベルで結合させる「直接接合」という手法を活用します。右の電子顕微鏡像のように材料の結晶同士を結晶性の乱れた領域1 nm厚以下で結合した放熱に理想的な状態を達成しました。これにより材料間の伝熱バリアを最小限に抑えた理想的な放熱構造が達成できます。

TECHNOLOGY

テクノロジー

簡易な装置で高付加価値な次世代複合ウェハの生産へ

TECHNOLOGY 01

高温・高真空プロセスが必要ない簡便な接合工程の活用

本研究で用いる直接接合手法では、材料表面に水酸基(-OH基)を作製した表面同士を反応させることで達成しております。これは高温(>1000 ℃)や超高真空が必要な従来手法と異なり、~200℃程度で大気でも接合が可能という特徴を持つため、一般的な熱プレス機にて複合基板を作製できます。これにより専用の接合機が必要な既存手法よりも装置コストを抑えることができると考えております。

TECHNOLOGY 02

イオン注入を用いたウェハスケールでの酸化ガリウムの極薄化

また放熱効率を最大化するには、熱伝導率に低い酸化ガリウムを薄くする必要があります。ただ研削による薄型化は困難で、効率的な薄化技術の実現が望まれています。今回高濃度にイオン注入した層を接合後に剥離させるプロセスを活用して、酸化ガリウムの薄型化をウェハスケールで効率よく実施できると期待できます。

PRESENTATION

共同研究仮説

ポストSi時代の複合型の半導体基板をぜひ一緒に作りませんか。

共同研究仮説01

省エネ時代に適した半導体基板を目指して

カーボンニュートラルなどの環境目標の達成に向けて、省エネ技術に対する関心が深まっております。本開発で目指す酸化ガリウムからなるパワー半導体が製造されることで大きな省エネ効果が見込めるため、そのキーとなる良好なウェハの実現を目指します。本技術が産業展開され、次世代パワー半導体が製造可能になるよう全力を尽くしていきますので、一緒にやっていけますと幸いです。

共同研究仮説02

酸化ガリウムに限らず他半導体材料の高放熱化も

また本開発計画は酸化ガリウムにフォーカスしたものですが、この高放熱化はSiや他の化合物半導体材料へも応用できると考えております。例えば高速動作用の化合物半導体をダイヤモンド放熱基板上に直接接合し放熱効率を向上させることで、自己発熱に制限されずに微細化・高速化・高出力化を進めることが期待できます。このように多くの分野に広がっていく技術となればと考えております。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

松前 貴司 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
エレクトロニクス・製造領域
デバイス技術研究部門
経歴

2012年 3月:東京大学 工学部       精密工学科   卒業

2014年 3月:東京大学 工学系研究科 精密工学専攻 修士課程 修了

2014年 6月:Old Dominion University , Visiting Scholar(2015年3月まで)

2017年 3月:東京大学 工学系研究科 精密工学専攻 博士課程 修了

2017年 4月:国立研究開発法人産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター 研究員

2020年 10月:国立研究開発法人産業技術総合研究所 デバイス技術研究部門 主任研究員(現在に至る)

研究者からのメッセージ

ウェハの接合技術を専門に研究を進めてきまして、次世代複合ウェハの生産に繋げるのが希望です

表面・界面の反応や分析を軸として、半導体ウェハを貼り合わせる研究を進めてきました。特にパワー半導体の放熱がホットとなっており、次世代複合ウェハとして産業展開できればと希望しております。ご興味ありましたらぜひご連絡お願い致します。