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最終用途例
APPLICATION
本計画にて放熱効率の高い酸化ガリウムウェハの生産が可能になると期待できます。これにより酸化ガリウムの課題である放熱効率の低さが克服され、酸化ガリウムパワー半導体の実用化が大きく進むと期待されます。
APPLICATION
現状のパワー半導体では制御できない高出力・高周波数の電力は進行波菅などが使用されますが、高放熱型の酸化ガリウムパワー半導体により制御可能な出力・周波数が向上すると、小型軽量な半導体チップにて効率的な電力制御が可能になります。
強み
放熱基板に高い熱伝導率をもつ炭化ケイ素(SiC)およびダイヤモンド基板を活用することで高い放熱効果が得られます。SiCは放熱材料として一般的な銅(Cu)やアルミニウム(Al)よりも高い熱伝導率を有し、また大型ウェハの商用化も進んでおります。またダイヤモンドは桁違いに高い固体中最大の熱伝導率を有するため、複合化することでパワー半導体の出力・周波数を大幅に向上させることができます。
酸化ガリウムと放熱基板の複合化にはんだ等の接合材を用いると、界面にて伝熱を妨げてしまいます。今回、私たちが開発してきた材料の表面同士を原子レベルで結合させる「直接接合」という手法を活用します。右の電子顕微鏡像のように材料の結晶同士を結晶性の乱れた領域1 nm厚以下で結合した放熱に理想的な状態を達成しました。これにより材料間の伝熱バリアを最小限に抑えた理想的な放熱構造が達成できます。
テクノロジー
本研究で用いる直接接合手法では、材料表面に水酸基(-OH基)を作製した表面同士を反応させることで達成しております。これは高温(>1000 ℃)や超高真空が必要な従来手法と異なり、~200℃程度で大気でも接合が可能という特徴を持つため、一般的な熱プレス機にて複合基板を作製できます。これにより専用の接合機が必要な既存手法よりも装置コストを抑えることができると考えております。
また放熱効率を最大化するには、熱伝導率に低い酸化ガリウムを薄くする必要があります。ただ研削による薄型化は困難で、効率的な薄化技術の実現が望まれています。今回高濃度にイオン注入した層を接合後に剥離させるプロセスを活用して、酸化ガリウムの薄型化をウェハスケールで効率よく実施できると期待できます。
共同研究仮説
カーボンニュートラルなどの環境目標の達成に向けて、省エネ技術に対する関心が深まっております。本開発で目指す酸化ガリウムからなるパワー半導体が製造されることで大きな省エネ効果が見込めるため、そのキーとなる良好なウェハの実現を目指します。本技術が産業展開され、次世代パワー半導体が製造可能になるよう全力を尽くしていきますので、一緒にやっていけますと幸いです。
また本開発計画は酸化ガリウムにフォーカスしたものですが、この高放熱化はSiや他の化合物半導体材料へも応用できると考えております。例えば高速動作用の化合物半導体をダイヤモンド放熱基板上に直接接合し放熱効率を向上させることで、自己発熱に制限されずに微細化・高速化・高出力化を進めることが期待できます。このように多くの分野に広がっていく技術となればと考えております。
イベント動画
研究者
2012年 3月:東京大学 工学部 精密工学科 卒業
2014年 3月:東京大学 工学系研究科 精密工学専攻 修士課程 修了
2014年 6月:Old Dominion University , Visiting Scholar(2015年3月まで)
2017年 3月:東京大学 工学系研究科 精密工学専攻 博士課程 修了
2017年 4月:国立研究開発法人産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター 研究員
2020年 10月:国立研究開発法人産業技術総合研究所 デバイス技術研究部門 主任研究員(現在に至る)