2021年度公募 seeds-1359 - 【甲信】 音響収束による流路内のマイクロプラスチック等粒子の高濃度濃縮回収・分析システム
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VISION

ビジョン

音響収束技術により、環境問題として注目されているマイクロプラスチックの濃縮回収と材質分析を実現する

マイクロ流路内における音響泳動を利用することで、濾過によらない濃縮回収技術を確立

近年、微細なプラスチック片であるマイクロプラスチックが環境や生態系に与える影響が問題視されています。このマイクロプラスチックの分析調査や回収にあたっては、従来はメッシュを用いた濾過により行われてきましたが、この方法では微細粒子によるフィルタの目詰まりなどの課題がありました。
本技術は、微細な流路中で超音波を照射することにより、マイクロプラスチックをはじめとする粒子を流路中央に収束させて、濃縮回収することを可能とする技術です。この技術を用いることで、回収時におけるメッシュの目詰まりといった課題を解決するとともに、本機構を複数配置することで、マイクロプラスチックなどの粒子を高濃度かつ高流量で処理することが可能となります。
このマイクロプラスチックの濃縮回収装置を既存の装置や製品に組み込むことによって、洗濯排水や工場排水などの多くのマイクロプラスチック発生源からマイクロプラスチックを除去することを目指します。

粒子の回収と分析を一気通貫で行うシステムより、マイクロプラスチック問題の実態解明の加速に寄与する

さらに顕微鏡下においてマイクロ流路を流れるマイクロプラスチックなどの粒子を画像処理により追跡しサイズを算出するとともに、顕微ラマン分光により材質分析を行うシステムを開発し、音響泳動による粒子の濃縮回収機構と組み合わせることで、マイクロプラスチックの濃縮回収から回収した粒子のサイズ計測と材質同定までを流れに沿って連続的に行えるシステムを構築します。
このシステムを構築することで、従来のマイクロプラスチックの分析調査において最も時間のかかる濾過回収後の後処理工程が不要となり、サイズや材質の分析を容易かつ効率的を行うことが可能となります。これにより、マイクロプラスチックの環境影響の実態解明に向けた調査の加速に寄与したいと考えています。

USE CASE

最終用途例

マイクロプラスチックなどの微粒子の濃縮回収と材質分析を行う新しいシステムを構築

USE CASE 01マイクロプラスチック濃縮回収装置

APPLICATION

APPLICATION

洗濯排水や工場排水からのマイクロプラスチックの除去・回収

マイクロプラスチックの大きな発生源の一つとして、衣服の洗濯が挙げられます。合成繊維製の衣服を洗濯すると、抜け落ちた合成繊維くずであるマイクロプラスチックファイバーが洗濯水と一緒に排水され、下水道を通り、海洋へ流出してしまいます。そこで、本技術を用いたマイクロプラスチック濃縮回収機構を、家庭用の洗濯機に組み込むことで、洗濯機から排出されるマイクロプラスチックを濃縮回収し、洗濯排水から除去することが可能となります。
また洗濯機以外でも、工場の排水処理装置などマイクロプラスチックが含まれる排水の経路に本機構を組み込むことで、マイクロプラスチックの流出を大きく削減することができます。

USE CASE 02マイクロプラスチック放出量の評価・分析

APPLICATION

APPLICATION

環境負荷の小さな新製品開発への活用

衣類や洗顔料、化粧品、歯磨き粉、洗顔料、紙おむつ、人工芝など、マイクロプラスチックは身の回りの生活用品のいたるところで使用されています。これらの生活用品について、より環境負荷が小さい新製品の開発を行う際に、本技術を用いた分析装置を、マイクロプラスチック放出量の試験・評価に活用することができます。様々な生活用品メーカによる、よりマイクロプラスチックが発生しづらい新製品開発に寄与できると考えています。

STRENGTHS

強み

マイクロプラスチックをはじめとする流路を流れる粒子を効率的に回収し、連続的に分析ができる

STRENGTHS 01

効率的な粒子の回収可能とする音響泳動による高濃度かつ高流量の濃縮回収機構

微細な流路中で超音波を照射することにより、微細な粒子だけでなく、1㎜~10㎛の範囲の比較的大きな粒子を含めて水より比重が重い流路内の粒子を回収可能であり、メッシュによる濾過方式と比較して微粒子による目詰まりが生じず、また比重分離や有機物の酸処理等の前処理が不要であり、効率的に粒子の回収が行えます。さらに複数の流路を連続的に配列することで高流量の処理も可能となります。

STRENGTHS 02

粒子の回収からサイズ計測と材質同定までを流れに沿って連続的に実施可能

音響泳動による濃縮機構に、顕微鏡下においてマイクロ流路を流れるマイクロプラスチックなどの粒子を画像処理により追跡しサイズを算出するシステムと、顕微ラマン分光により材質分析を行うシステムを組み合わせることにより、粒子を回収しながら、自動的に粒子のサイズ計測と材質同定を行うことが可能です。

TECHNOLOGY

テクノロジー

実用ニーズを踏まえた高濃度・高流量機構と自動分析系を構築

TECHNOLOGY 01

音響泳動による濃縮機構の連続配置による高濃度かつ高流量の処理システム

音響泳動による濃縮機構を、分岐により連続的に設けることで、約1万倍の粒子の濃縮回収を行うことが可能となります。また、流路サイズの拡大と複数流路の同一基板上への配置により、基板辺り約2L/hの高流量での処理ができると考えています。

TECHNOLOGY 02

画像処理とラマン分光法を用いた回収物の自動分析システム

追跡プログラムを開発することで、流路に設置した顕微鏡に取り付けたカメラからの画像を制御ソフトウェアにより連続処理し、流路内の粒子を追跡し、粒子像を保存することで粒子のサイズ計測を行います。さらに顕微ラマン分光装置を組み込むことで粒子からラマンスペクトルを取得し、材質の同定を行います。

PRESENTATION

共同研究仮説

 

共同研究仮説01

 

 

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

秋山 佳丈 国立大学法人信州大学 繊維学部 機械・ロボット学科
経歴

2012-2014 大阪大学 大学院工学研究科 講師
2010-2011 東京農工大学 大学院BASE/工学府 特任助教
2008-2008 日本学術振興会 特別研究員DC2
<受賞歴>
2019年 SI2019 優秀講演賞
2019年 マイクロ・ナノ工学部門 新分野開拓表彰
2019年 化学とマイクロ・ナノシステム学会 第39回研究会 優秀研究賞
2019年 SI2018 優秀講演賞