2021年度公募 seeds-1293 - 【北陸】 低原子価チタン化合物を用いたアルコールのC-OH結合ホモリシス法の開発
  • 素材
  • ケミカル
  • 化学
  • 材料工学
  • 新素材/高付加価値素材
  • コスト削減
VISIONビジョン

このシーズに
問い合わせる

VISION

ビジョン

アルコールをハロゲン化物や有機金属試薬の代わりに利用する

豊富かつ安価なアルコールを直接利用した分子変換反応による、有機合成の簡便化・効率化

クロスカップリングやGrignard反応に代表されるように、現代の有機合成は有機ハロゲン化物や、そこから誘導される有機金属化合物を合成中間体とした分子変換反応に強く依存しています。本研究では、これらの合成中間体をアルコールで代替する手法を開発します。アルコールは、様々な誘導体が入手可能な最もありふれた有機化合物群の一つであり、上記の有機ハロゲン化物の原料です。したがって、これらを自在にC-C結合形成等の反応に利用することができれば、より直接的で簡便な有機合成が実現し、合成に必要な時間的・物質的コストを削減できると考えています。

アルコールから炭素ラジカルを発生させる、合成化学の基盤となる試み

本研究では、「低原子価チタン化合物」を利用することにより、アルコールのC-OH結合を切断し、様々な反応に利用可能な活性種である「炭素ラジカル」を自在に発生させる手法を開発します。炭素ラジカルの反応性を利用すれば、上記のハロゲン化物・有機金属試薬が担っている反応のかなりの部分を代替することが原理的に可能です(例:クロスカップリング)。本研究では、単一の分子変換反応の開発ではなく、反応開発の基盤となる「高反応性活性種の発生法」の確立を目指します。ひとたび活性化法が確立されれば、アルコールを様々なラジカル反応に利用できる可能性が拓けると期待できます。

USE CASE

最終用途例

有機合成の迅速化・簡略化

USE CASE 01有機合成

APPLICATION

APPLICATION

アルコールを直接利用した分子変換反応により、従来の有機合成を強力に簡便・効率化

大量のサンプル合成が求められる化合物のスクリーニングを、従来必要だったアルコールのハロゲン化工程を省くことで低コスト化しつつ加速することができます。また、工程数減少により化成品の安価な生産に寄与する可能性も秘めています。

STRENGTHS

強み

炭素ラジカルを通じ、ありふれたアルコールを様々な有機合成反応に展開

STRENGTHS 01

アルコールは入手性が高い

我々の反応を用いると、第一級から第三級までの脂肪族アルコールを全て活性化することができます。多くの場合、これらは対応するハロゲン化物に比べると価格・入手性の両面において優れています。

STRENGTHS 02

ラジカルの化学をより扱いやすく

現在スタンダードな炭素ラジカル発生法は、ハロゲン化物等に対して毒性の高い有機スズ化合物を作用させる方法です。本研究を利用すれば、ハロゲン化物を作らなくてよい上、スズの使用も避けることができます。

STRENGTHS 03

安価なチタンにフォーカス

チタンは地殻中で9番目に多い元素であり、チタンを含む化成品は比較的安価に手に入るという特徴があります。我々が現在採用している試薬の合成にかかるコストは、原料の末端価格から概算すると4円/mmolです。

TECHNOLOGY

テクノロジー

低原子価チタン化合物を用いたあらゆる脂肪族アルコールのC-OH結合ホモリシスと、生じた炭素ラジカルを活かした有機合成反応を実現

TECHNOLOGY 01

古くて新しい低原子価チタン化合物によるC-OH結合ホモリシス

アルコールに対し低原子価チタン化合物を作用させると、C-OH結合がホモリシスし、高反応性活性種である炭素ラジカルが生成します。この反応は50年以上前から知られていますが、近年、我々が初めてこれを実用的な合成反応に展開することに成功しました。

TECHNOLOGY 02

様々な炭素ラジカルの利用法とコラボレーション

炭素ラジカルの利用法は近年急速に開拓されており、将来「使えるレシピ」として科学者の手元に届く可能性は高いと見込まれます。我々の研究をこれらに応用すれば、アルコールを用いた様々な合成反応が横並びに実現すると期待しています。

PRESENTATION

共同研究仮説

炭素ラジカルの化学を通して、一緒に有機合成の常識を塗り替えませんか

共同研究仮説01

炭素ラジカルをもっと身近なツールに

炭素ラジカルの反応性は魅力的ですが、下準備の迂遠さや従来の反応剤の安全性等の観点から現実にはしばしば忌避されるようです。だからこそ、ハロゲン化工程もスズも必要としない本研究には、炭素ラジカルを身近にし、有機合成の常識を塗り替えるチャンスが眠っています。

共同研究仮説02

精密合成以外の用途も歓迎

我々は小分子の精密有機合成にノウハウを持つグループですが、違った視点のご提案も歓迎いたします。例えば、炭素ラジカルはポリマー合成の分野においても重要な活性種として知られています。

いいことばかり書きましたが、課題はたくさんあります

本研究の技術的コンセプトは既に確立しましたが、やや高温を必要とする、アルコールによってうまくいかないパターンがある、具体的な使途が決まっていないなど、実装には多くの課題を残しています。これらの問題に共に立ち向かって頂けませんか。

RESEARCHER

研究者

菅 拓也 国立大学法人 金沢大学 理工研究域物質化学系
経歴

2011 ~ 2015年 東京工業大学博士後期課程
二酸化炭素を用いた単純芳香族化合物の触媒的C-H結合カルボキシル化

 

2015 ~ 2016年 学習院大学PD

イソキノリンの効率的酸化的C-H結合変換反応、有機酸による不斉触媒反応の開発、他

 

2016 ~ 2022年 金沢大学助教【現職】

アルコールのC-OH 結合ホモリシスの実現と合成化学的利用法の開発、他

 

【受賞歴】

2018年 有機合成化学協会 三井化学研究企画賞

2018年 宇部興産学術振興財団 奨励賞

研究者からのメッセージ

正直しんどい有機合成・・・に「楽」をもたらしたい

10年以上研究活動を行った結果、有機合成の実験は大変だと確信しました。簡単に手に入る「アルコール」を色々な化合物の合成にシームレスに利用する方法を開発し、有機合成をもっと「楽」にしませんか。