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最終用途例
APPLICATION
大量のサンプル合成が求められる化合物のスクリーニングを、従来必要だったアルコールのハロゲン化工程を省くことで低コスト化しつつ加速することができます。また、工程数減少により化成品の安価な生産に寄与する可能性も秘めています。
強み
我々の反応を用いると、第一級から第三級までの脂肪族アルコールを全て活性化することができます。多くの場合、これらは対応するハロゲン化物に比べると価格・入手性の両面において優れています。
現在スタンダードな炭素ラジカル発生法は、ハロゲン化物等に対して毒性の高い有機スズ化合物を作用させる方法です。本研究を利用すれば、ハロゲン化物を作らなくてよい上、スズの使用も避けることができます。
チタンは地殻中で9番目に多い元素であり、チタンを含む化成品は比較的安価に手に入るという特徴があります。我々が現在採用している試薬の合成にかかるコストは、原料の末端価格から概算すると4円/mmolです。
テクノロジー
アルコールに対し低原子価チタン化合物を作用させると、C-OH結合がホモリシスし、高反応性活性種である炭素ラジカルが生成します。この反応は50年以上前から知られていますが、近年、我々が初めてこれを実用的な合成反応に展開することに成功しました。
炭素ラジカルの利用法は近年急速に開拓されており、将来「使えるレシピ」として科学者の手元に届く可能性は高いと見込まれます。我々の研究をこれらに応用すれば、アルコールを用いた様々な合成反応が横並びに実現すると期待しています。
共同研究仮説
炭素ラジカルの反応性は魅力的ですが、下準備の迂遠さや従来の反応剤の安全性等の観点から現実にはしばしば忌避されるようです。だからこそ、ハロゲン化工程もスズも必要としない本研究には、炭素ラジカルを身近にし、有機合成の常識を塗り替えるチャンスが眠っています。
我々は小分子の精密有機合成にノウハウを持つグループですが、違った視点のご提案も歓迎いたします。例えば、炭素ラジカルはポリマー合成の分野においても重要な活性種として知られています。
本研究の技術的コンセプトは既に確立しましたが、やや高温を必要とする、アルコールによってうまくいかないパターンがある、具体的な使途が決まっていないなど、実装には多くの課題を残しています。これらの問題に共に立ち向かって頂けませんか。
研究者
2011 ~ 2015年 東京工業大学博士後期課程
二酸化炭素を用いた単純芳香族化合物の触媒的C-H結合カルボキシル化
2015 ~ 2016年 学習院大学PD
イソキノリンの効率的酸化的C-H結合変換反応、有機酸による不斉触媒反応の開発、他
2016 ~ 2022年 金沢大学助教【現職】
アルコールのC-OH 結合ホモリシスの実現と合成化学的利用法の開発、他
【受賞歴】
2018年 有機合成化学協会 三井化学研究企画賞
2018年 宇部興産学術振興財団 奨励賞