2021年度公募 seeds-1249 - 【九州】 メカニカルメタマテリアルによる振動抑制を可能とする超軽量構造の研究開発
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研究の成熟度

  1. TRL1

    基本原理・
    現象の確認

    基礎研究

  2. TRL2

    原理・現象の
    定式化

    基礎研究

  3. TRL3

    実験による
    概念実証

    応用研究

  4. TRL4

    実験室での
    技術検証

    応用研究

  5. TRL5

    使用環境に
    応じた技術検証

    実証

  6. TRL6

    実環境での
    技術検証

    実証

  7. TRL7以上

    実環境での
    技術検証

※TRL(TRL(Technology Readiness Level):特定技術の成熟度を表す指標で、異なったタイプの技術の成熟度を比較することができる定量尺度

VISIONビジョン

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VISION

ビジョン

超軽量化と多軸振動抑制機能による快適性や構造負荷軽減等の応用可能性・市場性の高い新材料技術の確立を目指す

大型構造物での革新的な人工材料の実用化

本研究開発では、メカニカルメタマテリアルの①超軽量化可能性、②構造特性の高度制御性、③微視構造における荷重伝達の制御性の特性を生かし、航空機・自動車等の輸送機分野、家屋・ビル・道路・橋梁等の建設分野、オーディオ等の音響電器分野などにおいて、例えば、振動を抑えた快適な乗り心地(エンジン、モノコック・ボディ等)、生活空間で感じる振動を抑えた構造負荷軽減等の応用可能性・市場性の最も高い新材料技術の確立を目指します。

この新材料では、従来型の対症療法的な車体振動抑制のためのサスペンションやダンパー、これら追加機器に伴う全体重量増加やシステムの複雑化といった影響を低減する振動抑制デバイス・システムとは根本的に異なる設計・材料思想を採用する。振動抑制機能を有する素材構造から成る本体構造により、追加機器等による重量増加も抑えられ、システムとして簡潔化された革新構造設計が実現されます。

3D造形技術を応用した高性能・機能人工材料により環境負荷の低減へ貢献

従来の高性能・機能材料は、目標特性を実現するために種々の元素の添加や合成により開発されることが多いが、その中には希少元素(レアメタル等)や環境負荷の大きい元素が含まれる場合がある。一方、最先端の人工材料であるメカニカルメタマテリアルは、その設計自由度の高さから、超軽量設計や軽量性と高強度の両立(例えば0.01g/cm3以下の超低密度型や約700 kg/m3の低密度と1GPaの圧縮強度を両立した高比強度型等)が可能である。更には振動抑制・衝撃吸収機能等を付与した高機能材料としても注目されており、構造性能の劇的な向上が可能となる。

そのため、希少元素などの多種元素の添加・合成や加工強化、熱処理によりナノ・ミクロスケールの結晶構造や結晶粒・粒界等の微細組織の制御を要しない革新的な手法として、メゾスケールの微視格子構造設計による数種の単純な成分系で同水準又はより優れた特性を有する人工材料を実現可能であり、低環境負荷な社会の実現にも貢献できます。

USE CASE

最終用途例

軽量性と高度な材料特性・機能の制御性を活かした革新的な人工材料

USE CASE 01自動車・航空機

APPLICATION

APPLICATION

自動車・航空機や建築物等の振動が問題となり、同時に高強度・軽量性等が要求される構造への応用

従来型の対症療法的な車体振動抑制のためのサスペンションやダンパー、これら追加機器に伴う全体重量増加やシステムの複雑化といった影響を低減する振動抑制デバイス・システムとは根本的に異なる設計・材料思想を採用した人工材料である。そのため、振動抑制機能を有する構成要素から成る全体構造の設計により、追加機器等による重量増加も抑えられ、システムとして簡潔化された革新構造設計が実現されます。

USE CASE 02音響機器・騒音低減構造等

APPLICATION

APPLICATION

振動に起因した性能・機能が求められる音響機器・騒音低減構造等への応用

メタマテリアルは、波の伝播に関する高度な制御が可能であることから、構造振動の制振効果以外にも、騒音低減構造や音響機器への応用も可能である。例えば、不要な周波数・ノイズのみを遮断・抑制し、純粋に響かせたい音のみを再生するスピーカー、生活環境に不要な雑音・不快音のみを遮断・抑制する騒音低減構造が実現できます。

USE CASE 03移動支援器具等の医療用途

APPLICATION

APPLICATION

障がい者や高齢者の移動支援器具等医療用途への応用

剛性やポアソン比の分布制御により柔軟性・変形を制御した人工骨は、軽量かつ実際の骨組織に似ており、注目が集まっています。軽量性や柔軟性、多機能性を活かすことで、生活福祉やレジャーの可能性を広げます。さらに、振動抑制機能により不要な構造負荷を低減することで、長期間快適に利用可能な構造が実現できます。

STRENGTHS

強み

構造性能・機能を革新的に飛躍させた新材料の実用化に向けて

STRENGTHS 01

3D造形技術によるメカニカルメタマテリアル製作における構造特性(剛性・強度・重量)の予測技術

3D造形では、樹脂素材を用いたFDM(熱溶解積層)手法や金属粉末を用いたPBF(粉末床溶融結合)手法、または連続繊維複合材の3D造形法など、様々な素材に対応した造形手法が開発されております。それらの造形手法では、造形に関連するパラメータ設定に応じて造形物の構造特性や形状精度が大きく変化することが知られており、3D造形構造の実用化におけるハードルとなっております。本研究開発では、そうした3D造形構造の設計・製作における課題を克服し、3D造形技術を応用して信頼性の高い実用構造物を安定的に製作するために必要な設計・解析手法の開発にも取り組んでおります。

特に、金属及びCFRP等の複合材料による3D造形技術を活用することで、構造物の運用に十分な強度・剛性を担保したうえで、軽量化も実現します。
また、小型デバイスの検討に留まっているメカニカルメタマテリアルを大型構造物へ適用するためには、最適な統合設計を検討する必要があり、そうした大型構造物への適用に向けた設計検討にも取り組みます。

STRENGTHS 02

振動抑制効果を付与した材料実現のための解析・試験技術

振動が問題となる構造への応用を想定した構造・材料を開発する場合、対象とする適用先に応じて求められる振動周波数帯が異なりますが、メカニカルメタマテリアルでは、振動抑制機能を発現させる周波数帯を微視構造設計により制御することが可能となります。そうした機能制御に必要な微視構造設計と振動抑制機能の相関を評価し、求める機能を実現するための設計を探査するための解析技術及び実験による実機能・性能評価手法の検討・開発にも取り組みます。

TECHNOLOGY

テクノロジー

システムとして簡潔化された革新構造設計の実現に向けて

TECHNOLOGY 01

マルチスケール設計及び解析手法の確立

メカニカルメタマテリアルを”構造材料”として実用化するため、微視的な材料性状やマクロな構造体へ統合した際の構造特性を予測しつつ、最適設計を検討可能とするマルチスケール設計及び解析手法の確立を目指します。

さらに、”機能材料”としての活用も可能な多機能構造・材料としての設計を実現するために、特に振動抑制機能に着目をして、狙った周波数帯で振動抑制効果を発現するための機能予測技術の開発にも取り組みます。

TECHNOLOGY 02

高精度かつ高効率に造形可能な積層造形手法の確立

従来の切削等による制作が困難なため、多様な微視構造の形態的特徴を表現するモジュールとそれを踏まえた数値均質化法を統合した造形手法を用いるとともに、先行研究で蓄積してきたデータベースを活用した積層造形物の造形条件により特性変化予測モデルを活用し、複雑構造に対する効率的な積層造形手法・パラメータの提案手法を確立します。

PRESENTATION

共同研究仮説

3D造形技術を効果的に応用した高性能と振動抑制機能を兼ね備えた多機能メカニカルメタマテリアルの創出により、革新的な構造・新製品開発を実現しましょう

共同研究仮説01

構造部材としての高性能と振動抑制機能による高い安全性・動的安定性を実現するための設計・3D製造プロセスを活用

構造・部材の性能要求に応じた形状や構造特性、及び振動抑制機能を独自の設計・解析技術及び3D造形技術を応用し、最適な実用構造・部材の実現を目指します。

共同研究仮説02

多様な格子(ラティス)構造の組み合わせにより、広範な静的及び動的な構造特性を検討

振動抑制機能を付与したメカニカルメタマテリアルでは、高周波帯や低周波帯など狙った周波数帯での振動抑制効果を実現した構造・デバイスを検討可能です。また、構造特性(剛性・強度・重量等)も軽量性と強度の両立など目的に即した検討が可能ですので、ぜひご相談ください。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

津島 夏輝 九州大学大学院工学研究院・准教授
東京大学大学院工学研究科・特任准教授
宇宙航空研究開発機構航空技術部門・客員研究員
経歴

米国アラバマ大学で博士号を取得後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)研究員、東京大学大学院特任准教授を兼務。現在は、九州大学大学院工学研究院にて准教授として勤務。専門は空力弾性、構造力学、積層造形、メカニカルメタマテリアル等。
特に、流体構造連成などのマルチフィジックス解析技術や積層造形(AM)技術を応用した革新人工材料(ラティス構造・メタマテリアル等)のマルチスケール解析技術の確立と、航空宇宙構造システムへの応用研究に従事。
これらの業績が評価され、日本航空宇宙学会賞(奨励賞、2022年度)、日本機械学会奨励賞(研究、2022年度)、日本航空宇宙学会若手奨励賞(2019年)などを受賞。