2020年度公募 seeds-1210 - 【近畿】 「低分子化合物-RNAペア」データ収集のための迅速スクリーニング法の開発とRNA標的低分子デザインのための「低分子化合物-RNAペア」予測モデルの構築
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VISION

ビジョン

「RNAを標的とする低分子の最適分子設計指針の獲得」および「RNA標的低分子創薬研究の加速化」を目指す

RNA標的低分子の合理的デザインが可能になる

ヒトゲノムの塩基配列のうち、「機能を持つ」とされている領域は約80%と言われています。そのうちタンパク質にまで翻訳される領域は約3%ほどで、残りの77%は転写されたRNAの状態で機能を発揮していると言われています。RNAは次世代の創薬標的として注目されており、RNAを標的とした低分子創薬研究は欧米では勢いを増しています。しかしながら、日本国内でのRNAを標的とする低分子薬開発はほとんど進んでいません。RNA標的低分子研究のボトルネックとなっているのは、「低分子化合物-RNAペア」の具体例が少ないこと、低分子化合物の分子デザイン指針が未整備なことにあります。
そこで、本研究開発では、「低分子化合物-RNAペア」データ収集を迅速にスクリーニングする手法を確立します。具体的には、miRNA前駆体中に設計したランダム領域に対する、任意の低分子化合物の結合能を評価するスクリーニング手法です。さらに、このスクリーニング法を利用して得た「低分子化合物-RNAペア」のビックデータを基に、RNA標的低分子デザインに資する「低分子化合物-RNAペア」予測法を構築しRNA標的低分子薬開発における手法を標準化することで、低分子化合物の分子デザイン指針の整備を実現します。

RNA標的低分子創薬研究の加速化による相乗効果

本研究開発により、国内のアカデミアおよび製薬企業等のRNA標的低分子創薬分野への参入を促し、RNA標的低分子創薬研究の活性化およびRNA標的低分子創薬開発を加速させることができます。
RNA標的低分子創薬開発を加速化することで、これまで薬の開発が困難とされていたタンパク質標的に対してRNAを標的にするという新しいアプローチを提案できます。また、例えば筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭葉変性症、脊髄小脳失調症、脊髄性筋萎縮症などは、RNAの機能異常やRNAプロセシングの異常が原因とされている難病ですが、現在までに治療法が確立されていない難病であり、治療法の確立やそのような難病患者の QOL 向上にも貢献します。

USE CASE

最終用途例

多くの研究者や企業がRNA標的低分子化合物の設計の知見を活かせるよう広めていきたい

USE CASE 01スクリーニング受託サービス

APPLICATION

APPLICATION

低分子化合物の標的RNA配列・構造をスクリーニングする受託サービス

「低分子化合物-RNAペア」データ収集のための迅速スクリーニング法の技術については、低分子化合物の標的 RNA 配列・構造のスクリーニングを受託している研究者および企業に向けて展開することを想定しています。

USE CASE 02相互作用予測ソフトウェア開発

APPLICATION

APPLICATION

低分子化合物-RNA相互作用の予測のためのソフトウェア開発

RNA標的低分子デザインのための「低分子化合物-RNAペア」予測法については、多くのユーザーが利用できるような低分子化合物-RNA 相互作用の予測のためのソフトウェアを開発に展開することを想定しています。

STRENGTHS

強み

これまで標準化されていなかったRNA 標的低分子薬の開発手法を標準化できる

STRENGTHS 01

取得した「低分子化合物-RNAペア」のデータをデータベース化することができる

「低分子化合物-RNAペア」データ収集のための迅速スクリーニング法の開発により、結合する RNA とそれ以外の RNA を全て解析できることから、AI導入に適した膨大な情報が得ることができます。

STRENGTHS 02

複数の酵素反応とハイスループット配列解析技術を利用し、煩雑な操作を必要としない手法

「低分子化合物-RNAペア」データ収集のための迅速スクリーニング法は、条件および実験操作の最適化を図った酵素反応とハイスループット配列解析技術を利用する手法であり、例えばRNAの固定化や標識等を必要としないため、煩雑な操作は不要です。

STRENGTHS 03

「低分子化合物-RNAペア」のデータをもとにした汎用的分子設計モデルの構築

取得した「低分子化合物-RNAペア」のデータを活用し、分子の形や原子の種類だけでなく、RNA 結合に重要な構造活性相関や物理化学的性質についての情報を組み合わせることで、RNA標的分子設計の汎用的なモデルを構築することが可能になります。

TECHNOLOGY

テクノロジー

低分子化合物-RNA相互作用の迅速スクリーニング法とAIを活用した予測モデル構築

TECHNOLOGY 01

酵素DicerによるRNAライブラリーの切断反応と次世代シーケンサーを用いた反応産物の配列解析

低分子化合物-RNA相互作用の迅速スクリーニング法の開発にあたり、酵素DicerによるRNAライブラリーの切断反応と次世代シーケンサーによる配列解析を組み合わせた簡単な手法を提案し、検証します。Dicerにより切断されたpre-miRNAの切断部位に低分子化合物が結合すると、Dicerによる切断が阻害されることを利用し、低分子化合物が結合するRNA配列を探索します。

TECHNOLOGY 02

AIを活用し「低分子化合物-RNAペア」予測モデルを構築する

低分子化合物-RNA相互作用の迅速スクリーニング法により得られた大規模な「低分子化合物-RNAペア」のデータを基に、化合物の構造的・物理化学的な特徴と結合RNA配列との関係性を統計的に解析し、標的RNAへの結合に重要な低分子化学物の構造的・物理化学的な特徴を抽出します。そして、大規模データの機械学習により、低分子化合物の化学構造から結合標的候補となるRNAを予測するためのモデルを構築します。

PRESENTATION

共同研究仮説

黎明期を迎えるRNA標的低分子薬の普及に貢献したい

共同研究仮説01

RNAを標的とした低分子薬開発市場への参入を後押ししたい

RNA標的低分子薬の開発は、これまで標準化された手法が確立されていませんでしたが、例えばタンパク質を標的とする低分子薬の開発においては、標的タンパク質の構造情報に基づいたドッキングシミュレーションや機械学習による低分子化合物-タンパク質のペア予測がすでに取り入れられているため、本研究の手法と類似性があります。
本研究開発では、複雑かつ煩雑な手法ではなく、幅広い分野の研究者や企業への普及を目指していますので、RNA標的低分子創薬分野への参入を促していきたいと考えています。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

村田亜沙子 九州大学 総合理工学研究院
物質科学部門 物性科学講座
生体分子機能化学研究分野
経歴

(学歴)
平成13年3月 筑波大学 第二学群生物学類 卒業
平成15年3月 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 修士課程 修了
平成18年3月 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 メディカルゲノム専攻 博士課程 修了
(職歴)
平成18年6月 米国 ベイラー医科大学 生化学・分子生物学科 博士研究員
平成20年3月 京都大学 化学研究所 特任研究員
平成22年3月 京都大学 物質-細胞統合システム拠点 研究員
平成22年6月 大阪大学 産業科学研究所 特任研究員
平成24年12月 大阪大学 産業科学研究所 助教
令和1年12月 大阪大学 産業科学研究所 准教授
令和4年4月 九州大学 総合理工学研究院 准教授

研究者からのメッセージ

RNA標的低分子の合理的デザインを実現したい

生命科学の実験技術とデータ科学的アプローチを組みわせることで、「低分子化合物–RNA」相互作用を予測するモデルを構築したいと考えています。このモデルにより、RNA標的低分子創薬研究を加速させます。