2021年度公募 1416-2 - 【関東】 植物を用いてスキンケアに有用なヒト型遊離セラミドを量産する技術
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VISION

ビジョン

植物代謝酵素のチカラでスキンケアに有用なヒト型セラミドを生産する

セラミドスキンケアと植物由来セラミド

ヒト角質層には、肌のバリア機能を担う細胞外脂質層が存在します。遊離型セラミドはこの脂質層を構成する主要成分として肌バリア機能を支える物質であり、健康食品や基礎化粧品による供給が有効です。特に機能性表示食品のスキンケア部門において、植物由来セラミドはヒアルロン酸などの他成分を大きく上回る届出件数第1位の機能性関与成分であり、その市場規模は世界的にも拡大しています。現在利用されているのは主に植物グルコシルセラミドですが、実は植物体内にはこれを大きく上回る存在量でありながらまったく利用されていない、GIPCと呼ばれる複合型セラミドが存在します。本研究では、この未利用な植物性複合型セラミドGIPCを、植物自身の代謝酵素のはたらきによってヒト肌と類似の遊離型セラミドに変換する新規技術を開発します。

植物固有の複合型脂質GIPCからセラミドを遊離させる植物内在酵素

GIPCは全ての植物に普遍的に存在し、その含量はグルコシルセラミドの数倍に達することから、地球上に最も多く存在するセラミド含有物質として知られています。その糖鎖部分は極めて安定で、動物の消化液や腸内細菌による酵素的分解は未だ見出されていません。GIPCは私たちが日常的に摂取している植物性食品に多量に含まれているにも関わらず、生物学的にも、また産業的にも、全く未利用なセラミド資源です。我々の研究グループでは、ある種の植物を用いた温和な酵素反応によって、植物性GIPCの大部分が速やかに分解されて遊離型セラミドが生成する現象を発見しました。この反応で生成したセラミドは、既存のグルコシルセラミドと異なり、ヒト肌に含まれる有用成分と極めて近い化学構造を有することがわかっています。本研究開発では、この酵素の活用により、植物体内のGIPCを直接遊離型セラミドに変換する技術と、植物性廃棄物などから調達した未利用GIPCを反応容器内で遊離型セラミドに変換する技術の開発を目指します。

USE CASE

最終用途例

多様な植物材料から食品や化粧品に安心して利用できるヒト型セラミドを生産

USE CASE 01植物原料100%の遊離型セラミド

APPLICATION

APPLICATION

異種酵素や特殊な化学処理に頼らない、植物原料のみを用いた遊離型セラミドの生産

植物体内に豊富に存在するGIPCを植物内在性の酵素によりそのまま分解することで、食品や化粧品に利用できる安全な遊離型セラミドを生産します。また、グルコシルセラミドは分解されずにそのまま残るため、既存のグルコシルセラミド原料の付加価値を高めることも期待できます。

USE CASE 02植物性廃棄物のセラミド資源化

APPLICATION

APPLICATION

植物性廃棄物に残存するGIPCを、酵素のはたらきで有用セラミドに変換

GIPCは化学的に安定かつ難溶性の物質であるため、さまざまな植物性廃棄物中にも大量に残存していると考えられます。植物から抽出した酵素を用いる方法に加え、酵素を遺伝子レベルで同定することによりタンパク質人工合成系を確立し、反応容器内で遊離型セラミドを生産する手法を開発します。

STRENGTHS

強み

有用セラミドをさまざまな植物原料から生産可能

STRENGTHS 01

植物由来物質のみを用いて、天然に希少な遊離型セラミドを簡易・迅速・大量に生産

本技術に必要な素材は植物由来の天然成分のみです。食品や化粧品の原料として安全性が高い有用セラミドを、①植物内在性のGIPCと酵素の直接反応、もしくは②天然または人工合成した酵素を用いた試験管反応、といったシンプルな手法で、迅速かつ大量に生産することができます。

STRENGTHS 02

幅広い植物原材料から有用セラミドを生産

GIPCはすべての植物に大量に含まれるだけでなく、その安定性と難溶性から植物性廃棄物中にも大量に残存していると考えられます。これらからGIPCを抽出し、天然酵素や人工合成酵素を用いて有用セラミドに変換することができるため、さまざまな植物種・植物組織を原材料として選択可能です。

TECHNOLOGY

テクノロジー

植物を用いたヒト型セラミド生産の技術的優位性

TECHNOLOGY 01

特殊な原材料も複雑な技術も必要とせず、低コストにセラミドを生産

特別な原材料や複雑な技術は不要で、安全なセラミドを安価なコストで量産できます。

TECHNOLOGY 02

様々な植物種とゲノム編集を活用し、遊離型セラミド構造をデザインすることが可能

セラミド構造は植物種ごとに異なります。我々の研究グループでは、植物に特徴的なセラミド構造を正確に解析する卓越した化学分析技術と、それらの構造形成に関わる代謝酵素に関する知見を多数有しています。その活用により、セラミドの機能性構造をデザインする代謝工学技術を開発します。既存のスキンケア用途での機能性向上に加え、新機能をもつ健康食品や医薬品用途に利用可能なセラミド原料の開発へ展開します。

PRESENTATION

共同研究仮説

現有材料や製品ブランディングに応じたセラミド生産体系の構築

共同研究仮説01

用途や背景に合わせてフレキシブルに遊離セラミドを生産

本研究で開発を目指す技術により、様々な植物材料から高効率に有用セラミドを生産することが可能になると期待できます。企業が保有する候補原料や、製品ブランディングに有利な原材料など、産業的な価値の高いセラミド生産系を構築していきたいと考えています。

共同研究仮説02

植物由来ヒト型セラミドの有効性評価

遊離型セラミドの有用性は多方面で示されつつあるものの、現行のグルコシルセラミドに比べると臨床データは十分ではありません。これまで量産が難しかった遊離セラミドの生産技術確立により、試験研究を加速できます。企業と連携して、製品化を見据えた臨床研究を推進したいと考えています。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

石川 寿樹 埼玉大学大学院理工学研究科
経歴

【経歴】
2008年3月 新潟大学大学院 博士(農学)
2008年4月 埼玉大学大学院 産学官連携研究員
2012年4月 学術振興会特別研究員PD(埼玉大学)
2014年4月 埼玉大学大学院 理工学研究科 助教
2020年4月 同准教授
【主な受賞歴】
2019年9月 日本植物細胞分子生物学会(現日本植物バイオテクノロジー学会) 奨励賞
2019年11月 The 8th Asian-Oceanian Symposium on Plant Lipids  Best Poster Award
2020年11月 埼玉大学学長奨励賞(教育・研究)
【ホームページ等】
(研究室) http://park.saitama-u.ac.jp/~geneenvtech/index.html
(業績) https://researchmap.jp/toshi_ishikawa

研究者からのメッセージ

植物のチカラでセラミドスキンケア業界に新たな風を!

本研究の核となるGIPC分解酵素をはじめ、植物基礎研究で培ってきたセラミド関連物質の網羅解析技術や、セラミド関連酵素の代謝工学に関する技術で産業に貢献したいです。