若手研究者産学連携
プラットフォーム
ビジョン
最終用途例
APPLICATION
結晶構造中のオリゴマー接触面に存在する疎水性アミノ酸を一残基だけ置換し、ROの効果的な阻害を試みる。これによって蛋白質凝集を大幅に抑制でき、また蛋白質分子全体への影響は最小限にとどまると期待される。
APPLICATION
同一の蛋白質でも、pHを等電点に近づける・蛋白質濃度を上げる・塩濃度を増加させることでRO形成が促進されるという知見をもとに、ROおよび蛋白質凝集が生じにくい溶媒条件を検討する。
強み
複数の種類の小型球状蛋白質で、オリゴマー接触面の疎水性残基がRO形成に重要であるという共通の性質を発見し、疎水性の低いアミノ酸に一残基置換するだけで、RO形成が効果的に阻害されることを発見した。そして元の立体構造・機能・他の物性には殆ど影響せず、RO形成能だけを特異的に低下させたと考えられる。
蛋白質が熱変性してROを形成するとき、示差走査熱量計(DSC)測定では2本の吸熱ピークが観測されるなど、複雑な熱転移が起きてしまう。ところがROを阻害した変異体では吸熱ピークが1本に減るため、シンプルな熱転移モデルを用いることで熱安定性の評価を高精度で行うことが可能になる。
脳のシナプス後肥厚の足場蛋白質(PSD95-PDZ3)に対して、上記の手法でROを阻害した変異体を設計したところ、ROの阻害だけでなく、アミロイド線維の形成も抑制されることが分かった。アミロイド線維は神経変性疾患の原因としても注目されており、本研究手法を医療・製薬の分野にも応用しようと計画して
テクノロジー
ROの阻害に成功した蛋白質の共通点として、結晶構造中のオリゴマー接触面に存在する疎水性アミノ酸をターゲットにし、疎水性の低いアミノ酸に一残基置換した点が挙げられる。したがって複数の分子間ではたらいている疎水性相互作用がRO形成の駆動力であると考えられ、RO阻害を目指した分子設計法の開発でも注目している。
蛋白質のRO形成にはpH依存性があり、溶媒のpHが蛋白質の等電点に近づくほどRO形成が起こりやすいと判明している。したがって荷電性アミノ酸を電気的に中性なアミノ酸へ一残基置換し、同じ符号の電荷を分子表面に帯電させることで、溶液中での分子間の静電的な反発によってRO形成を阻害できると推測している。またアミノ酸変異を導入しなくても、溶媒のpHやイオン濃度を制御することで、同様に分子間の静電的な反発を促進でき、RO形成の人工的な抑制に向けて溶媒条件の最適化も必要だと考えられる。
共同研究仮説
生物学的に重要な機能をもった蛋白質でも、溶解性・熱安定性の低さが原因で凝集してしまう場合、産業用酵素・抗体医薬品として製品化するのは難しい。そこで本研究提案で開発した「ROを阻害するための一残基置換による分子設計法」を利用し、凝集傾向性を低下させた変異体を設計することで、蛋白質製剤の開発に役立てる。
研究者
2019年9月 東京農工大学 工学府博士後期課程 卒業
2019年10月 東京農工大学グローバルイノベーション研究院 特任助教
2020年12月 長岡技術科学大学 生物機能工学専攻 助教
その他の情報(研究業績など)は、以下のサイトを参照していただければ幸いです。
https://researchmap.jp/tsaotome502