2021年度公募 seeds-1632 - 【近畿】 「引いてダメなら押す」コンセプトに基づいた高機能ハロゲン化触媒の創出と機能開拓
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VISION

ビジョン

有機分子に「つなぎ目」を作る世界最強の新触媒を開発する

ハロゲンは有機化学における万能な「つなぎ目」

有機化学は、世界最小の「ものづくり」に挑む研究分野です。多様な機能持つ素材(機能性分子)を創出するため、精密分子加工を実現する新たな技術の開発が求められてきました。 2010年ノーベル化学賞を受賞したカップリング反応は、こうした市場ニーズにズバリ答える技術だと言えるでしょう。有機分子を自在につなぎ合わせることが可能となり、多くの機能性分子が生み出されてきました。では、その「つなぎ目」を作る技術の進展はどうでしょうか?

塩素(Cl)臭素(Br)ヨウ素(I)といったハロゲン元素を含む分子(ハロゲン化合物)は、あらゆる化学結合に変換できる万能な「つなぎ目」であり、ハロゲン化合物を軸に標的分子の合成ルートを設計することが、現代の有機化学での定石となっています。また合成中間体としての価値のみならず、ハロゲン元素の導入によって有機分子の特性をチューニングできることの利用価値は、市販の医薬品&農薬の約60%がハロゲン元素を含むことからも裏付けられています。本研究の目的は、こうした価値あるハロゲン化合物を効率的に合成するため、世界最強の活性を持つ新触媒を開発することです。

「繊細かつ精密」な反応を実現する新機軸の触媒設計

有機分子にハロゲン元素を導入する(ハロゲン化反応)には、塩素(Cl2)や臭素(Br2)を使用することが一般的である。これら試薬は毒性や腐食性が高く、特別な安全対策や設備投資が必要となることに加えて、医薬品やファインケミカルなど「繊細な」分子に対する反応や、選択性を制御した「精密な」化学変換に適用することが難しい。安全性に優れた代替ハロゲン試薬が多数あるものの、試薬の安定性と反応性はトレードオフの関係にあり、不足した反応性を補うためには強力な酸触媒(硫酸・金属ルイス酸など)を使う必要があることから「繊細かつ精密」な反応の実現は不可能とされてきました。こうした未解決課題に対して本研究では、① 広範な適用性, ② 高い反応効率と選択性の両立, ③ 優れたユーザーフレンドリー性を兼ね備えた新触媒の開発するため、「引いてダメなら押す」コンセプトに基づいた新基軸の触媒設計を立案しました。触媒機能を持った有機分子の設計&構造チューニングを行うことで、高い反応性を持つイオン性化学種の発生を制御し、安価で安全な代替ハロゲン試薬を使用しながら、これまで誰も実現できなかった高度な分子加工技術を確立することを目指します。

USE CASE

最終用途例

有機化学の「定石」に新たな一手を

USE CASE 01医薬品等のファインケミカル合成の迅速化

APPLICATION

APPLICATION

好きなタイミングで使える反応

従来のハロゲン化反応では「繊細な」有機分子の構造を破壊してしまう問題があります。新触媒の開発によって、この制限を取り払うことができれば、有機分子の合成ルート設計の自由度が高められると期待されます。

USE CASE 02新規ビルディングブロックの創出

APPLICATION

APPLICATION

新規ナノカーボンの開発に向けた素材の提供

フラーレンやカーボンナノチューブ等のナノカーボン分子は、次世代の素材として様々な分野で注目を集めています。これら新素材の精密設計を実現するため、本研究で実現するハロゲン化反応が有力な合成ツールとして活用できます。

STRENGTHS

強み

「引いてダメなら押す」ことのメリット

STRENGTHS 01

室温&中性条件でハロゲン化を実現

合成化学としての最大の強みは、室温&中性という非常にマイルドな条件でハロゲン化を実施できることです。これは新触媒の「押す」という活性化形式だからこそ実現できる特徴といえます。

STRENGTHS 02

誰でも&どこでも使える

安価で安全な試薬を使って反応を実施できるので、特別な設備や訓練が無くとも使えるユーザーフレンドリー性の高さが特徴です。実験室レベルから工業スケールまで幅広く活用できる技術として実用化を目指しています。

TECHNOLOGY

テクノロジー

触媒+アルファの機能を持たせる

TECHNOLOGY 01

有機分子触媒の高いチューニング自由度

本研究で開発する新触媒は、金属を含まない「有機分子触媒」です。構造を細かく変化させられるという有機分子の特徴は、目的とする用途に合わせて触媒機能の詳細なチューニングが可能というメリットとなります。

TECHNOLOGY 02

簡単に回収&再利用

触媒機能チューニングの一環として、ポリマーやマグネタイトなど材料に触媒を担持させることも可能です。例えば、シート状に加工した触媒担持ポリマーであれば、使用後にピンセットでつまんで回収&再利用ができるようになります。

PRESENTATION

共同研究仮説

大学発のシーズを「活きた技術」とするために

共同研究仮説01

大学のフットワークの軽さ×企業の開発技術

私達の基礎研究が実用的な「活きた技術」として価値を持つためには、産業界とのマッチングは欠かせません。共同研究を通じて、産業面でのイノベーション開拓と若手研究者の新たな研究展開にシナジー効果が生まれると考えています。

EVENT MOVIE

イベント動画

RESEARCHER

研究者

西井 祐二 国立大学法人 大阪大学 大学院工学研究科
経歴

2015 大阪大学大学院 博士後期課程修了

2015-2020 大阪大学大学院 工学研究科 助教

2020-現職 大阪大学大学院 工学研究科 講師

研究者からのメッセージ

目指すなら世界最高のものを

せっかく研究するならば、誰も実現できなかったことを追い求めたい、というのが私の思う最大のロマンです。そこから少しでも世の中の役に立つものが生み出せれば喜ばしい限りです。少しでも興味を持たれましたら、ぜひお話させてください。